***恋心 63 〜あきつく〜***



  強引に抱きしめられて、あたしは戸惑った。

今までの彼に対するあたしの認識と違いすぎるんですけど?

「あの―――美作さん?」

「何」

「どうして―――こんなことするの?」

「―――それ、言わなきゃわかんねえ?」

「そりゃ―――だって―――美作さんがこんなことする理由なんてあたし―――」

「たとえば」

「へ?」

「俺がお前のことを好きなんじゃないかとは、思わない?」

あまりに驚いて。

言葉が出てこなかった。

美作さんがあたしを?

そんなこと、考えたこともなかった。

どうしよう。

なんか、嬉しいんだけど。

「―――悪い」

不意に、美作さんがあたしから離れる。

「え―――?」

「困らせたかったわけじゃない。今のは―――忘れろ」

「忘れろって―――」

「お前の気持ちはわかってるから。だから―――今まで通り友達でいてくれればいい。変に意識されたりするとこっちも気まずいし」

何、それ。

あたしの気持ちはわかってるって、どういうこと?

あたしの、何をわかってるの?

「もう帰れよ。これ以上ここにいると俺も何するかわかんねえぞ」

それでも、あたしは動かずにいて。

美作さんが、イライラとあたしを振り返る。

「何してんだよ?帰れって!」

「いや」

「は?」

「そんな風に一方的に自分の言いたいことだけ言って、あたしの気持ちは無視するの?」

「な―――何言ってんだよ?」

「美作さんが、あたしの何を知ってるの?」

「おい―――何怒ってんだよ」

「怒ってるんじゃない!あたしは―――」

「牧野・・・・・?」

気づいたら、頬を涙が伝ってた。

驚いてあたしを見つめる美作さん。

だって、悔しくて。

いつもいつも人に気を使って。

1人大人な顔して一歩引いてみんなを見てて。

そんな彼をいつの間にか目で追ってるあたしがいて。

でも今まで気づかなかった。

あたしにとって彼が特別だってこと。

そんな自分が、悔しくて―――。

「おい、牧野―――」

心配そうにあたしの顔を覗き込む美作さんのシャツを、グイっと引っ張った。

「お―――っ!?」

勢いに任せて、唇を重ねる。

だって、どう言ったらいいかわからなかったから。

もう、行動でわかってもらうしか、ない―――。

―――大好き―――







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