強引に抱きしめられて、あたしは戸惑った。
今までの彼に対するあたしの認識と違いすぎるんですけど?
「あの―――美作さん?」
「何」
「どうして―――こんなことするの?」
「―――それ、言わなきゃわかんねえ?」
「そりゃ―――だって―――美作さんがこんなことする理由なんてあたし―――」
「たとえば」
「へ?」
「俺がお前のことを好きなんじゃないかとは、思わない?」
あまりに驚いて。
言葉が出てこなかった。
美作さんがあたしを?
そんなこと、考えたこともなかった。
どうしよう。
なんか、嬉しいんだけど。
「―――悪い」
不意に、美作さんがあたしから離れる。
「え―――?」
「困らせたかったわけじゃない。今のは―――忘れろ」
「忘れろって―――」
「お前の気持ちはわかってるから。だから―――今まで通り友達でいてくれればいい。変に意識されたりするとこっちも気まずいし」
何、それ。
あたしの気持ちはわかってるって、どういうこと?
あたしの、何をわかってるの?
「もう帰れよ。これ以上ここにいると俺も何するかわかんねえぞ」
それでも、あたしは動かずにいて。
美作さんが、イライラとあたしを振り返る。
「何してんだよ?帰れって!」
「いや」
「は?」
「そんな風に一方的に自分の言いたいことだけ言って、あたしの気持ちは無視するの?」
「な―――何言ってんだよ?」
「美作さんが、あたしの何を知ってるの?」
「おい―――何怒ってんだよ」
「怒ってるんじゃない!あたしは―――」
「牧野・・・・・?」
気づいたら、頬を涙が伝ってた。
驚いてあたしを見つめる美作さん。
だって、悔しくて。
いつもいつも人に気を使って。
1人大人な顔して一歩引いてみんなを見てて。
そんな彼をいつの間にか目で追ってるあたしがいて。
でも今まで気づかなかった。
あたしにとって彼が特別だってこと。
そんな自分が、悔しくて―――。
「おい、牧野―――」
心配そうにあたしの顔を覗き込む美作さんのシャツを、グイっと引っ張った。
「お―――っ!?」
勢いに任せて、唇を重ねる。
だって、どう言ったらいいかわからなかったから。
もう、行動でわかってもらうしか、ない―――。
―――大好き―――
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