***恋心 61 〜つかつく〜***



  会いたくても会えない。

それがこんなに辛いものだって、初めて知った。

そんなに辛いならやめちゃえばいいのにと、心の中で声がするけど。

でも、やめることなんてできない。

だって好きだから。

会えなくてもこんなに―――

最近のあたしはちょっと情緒不安定だ。

1人きりになると、自然と涙が出てきてしまう。

あいつの―――道明寺のことを思い出して―――

今日も家までの帰り道、夕焼けを見ていたら、涙が溢れて来てしまった。

誰も見ていないから。

そのまま涙も流れるままにしておく。

その涙の向こうに。

背の高い、あいつの影―――

―――幻―――?

「お前、何泣いてんだよ」

―――幻聴―――?

「泣くなよ」

頬に触れた手は、確かに暖かくて。

「―――お前に泣かれると、困る」

いつも自信満々のあいつが、少し困ったように首を傾げて。

消えてしまわないように―――

あたしは、道明寺の腰にギュッと抱きついた。

「―――会いたかった」

「―――俺もだよ」

少しほっとしたような―――

照れくさそうな声が降ってきて。

あたしの瞳には、また涙が溢れた―――。







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