エレベーターに閉じ込められるってシチュエーション、確か前に道明寺と―――
「―――通じないな」
類が非常用のボタンを押しながら言う。
「たぶん―――朝になれば、誰かが気づいてくれると思うけど」
「じゃ、朝までここに?」
花沢類と、なぜかビルのエレベーターに閉じ込められてしまったあたし。
まだ朝までにはだいぶ時間がある。
暖房も入ってないし、体もどんどん冷えてくる―――。
「ごめん、類。あたしのせいでこんな―――」
「牧野のせいじゃないよ」
「でも―――」
「エレベーターに閉じ込められるなんて、だれも予想できないし。それより―――もっとこっち来て」
そう言うと、類はあたしの腕を掴み、自分の方へ引き寄せた。
類に抱きしめられるような体制になり、あたしの胸がドキドキと騒がしくなる。
「る、類―――」
「寒いから―――こうしてくっついてれば少しはあったかい」
「あ―――うん」
そうだよね。そういう意味だよね。
ほっとしたような、がっかりしたような―――
「でも、こんなにくっついてるとやばいかも」
「何が?」
類を見上げると、ドキッとするような甘い笑顔。
「―――離したくなくなるから」
その言葉に、あたしの思考回路が一瞬ストップする。
そして。
類の唇が、あたしの唇に重なって。
もっと強く抱きしめられて、我に帰る。
「な―――なんで」
「したくなったから」
「な―――」
「好きだから」
「―――類」
「離したくないから」
「類―――」
「ずっと―――こうしてたい」
「―――あたしも・・・・・」
小さく呟いた声は、自分でも驚くほど震えてて。
それでも、類にはあたしの声がちゃんと届いていて。
「―――よかった」
嬉しそうな声が耳元に響き―――
もう一度、2人の唇が重なった―――
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