***恋心 60 〜類つく〜***



  エレベーターに閉じ込められるってシチュエーション、確か前に道明寺と―――

「―――通じないな」

類が非常用のボタンを押しながら言う。

「たぶん―――朝になれば、誰かが気づいてくれると思うけど」

「じゃ、朝までここに?」

花沢類と、なぜかビルのエレベーターに閉じ込められてしまったあたし。

まだ朝までにはだいぶ時間がある。

暖房も入ってないし、体もどんどん冷えてくる―――。

「ごめん、類。あたしのせいでこんな―――」

「牧野のせいじゃないよ」

「でも―――」

「エレベーターに閉じ込められるなんて、だれも予想できないし。それより―――もっとこっち来て」

そう言うと、類はあたしの腕を掴み、自分の方へ引き寄せた。

類に抱きしめられるような体制になり、あたしの胸がドキドキと騒がしくなる。

「る、類―――」

「寒いから―――こうしてくっついてれば少しはあったかい」

「あ―――うん」

そうだよね。そういう意味だよね。

ほっとしたような、がっかりしたような―――

「でも、こんなにくっついてるとやばいかも」

「何が?」

類を見上げると、ドキッとするような甘い笑顔。

「―――離したくなくなるから」

その言葉に、あたしの思考回路が一瞬ストップする。

そして。

類の唇が、あたしの唇に重なって。

もっと強く抱きしめられて、我に帰る。

「な―――なんで」

「したくなったから」

「な―――」

「好きだから」

「―――類」

「離したくないから」

「類―――」

「ずっと―――こうしてたい」

「―――あたしも・・・・・」

小さく呟いた声は、自分でも驚くほど震えてて。

それでも、類にはあたしの声がちゃんと届いていて。

「―――よかった」

嬉しそうな声が耳元に響き―――

もう一度、2人の唇が重なった―――







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