大学のカフェテリアで牧野と類の姿を見つける。
楽しそうに笑いながら話している姿は本当に自然で、仲のいいカップルに見える。
実際、類と牧野が付き合っていると思ってる人間は多い。
何といってもあの類が笑顔を見せるのは珍しいことだったし、牧野も類のことを信頼しているのが見ていてもわかるから。
だけど。
「あ、西門さん」
牧野が俺に気付いて振り向く。
「今日は早いね」
そう言って類も笑う。
「まあな」
俺は牧野の隣に座る。
そう。
今、牧野と付き合ってるのはこの俺なのに。
その事実が全く浸透していないっていうのはどういうことだ。
だから。
「牧野」
「え?」
俺の声に顔を上げた牧野の唇に。
俺は素早くキスを落とした。
呆気に取られ、固まる牧野。
類が、ちょっと目を見開き俺たちを見てる。
「―――な、何すんのよ、いきなり!」
ようやく我に返った牧野が、顔を真っ赤にして怒る。
「朝の挨拶」
「挨拶!!?」
「恋人同士だったら、当たり前だろ」
金魚みたいに口をパクパクさせる牧野。
こうして、俺のものだってことをたまにはアピールしておかないと。
ちらりと、学生が遠巻きにこちらに注目してるのを確認して。
俺は満面の笑みを、牧野に向けたのだった・・・・・。
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