***恋心 57 〜総つく〜***



  大学のカフェテリアで牧野と類の姿を見つける。

楽しそうに笑いながら話している姿は本当に自然で、仲のいいカップルに見える。

実際、類と牧野が付き合っていると思ってる人間は多い。

何といってもあの類が笑顔を見せるのは珍しいことだったし、牧野も類のことを信頼しているのが見ていてもわかるから。

だけど。

「あ、西門さん」

牧野が俺に気付いて振り向く。

「今日は早いね」

そう言って類も笑う。

「まあな」

俺は牧野の隣に座る。

そう。

今、牧野と付き合ってるのはこの俺なのに。

その事実が全く浸透していないっていうのはどういうことだ。

だから。

「牧野」

「え?」

俺の声に顔を上げた牧野の唇に。

俺は素早くキスを落とした。

呆気に取られ、固まる牧野。

類が、ちょっと目を見開き俺たちを見てる。

「―――な、何すんのよ、いきなり!」

ようやく我に返った牧野が、顔を真っ赤にして怒る。

「朝の挨拶」

「挨拶!!?」

「恋人同士だったら、当たり前だろ」

金魚みたいに口をパクパクさせる牧野。

こうして、俺のものだってことをたまにはアピールしておかないと。

ちらりと、学生が遠巻きにこちらに注目してるのを確認して。

俺は満面の笑みを、牧野に向けたのだった・・・・・。







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