うとうととまどろむ彼の腕の中。
どこからか、携帯の着信音が聞こえてきた。
「―――きの、牧野、お前の携帯」
西門さんの声に、目を開ける。
「ん―・・・・誰、こんな朝早く―――」
言いながら、ベッドの下にあったバッグの中から携帯を取り出す。
目をこすりながら開いた携帯の画面には『花沢類』の文字。
「―――類」
あたしの声に、西門さんがピクリと反応する。
「類?なんでこんな時間に」
「わかんないよ。―――もしもし」
携帯を耳に当て、類と話しながらそれを思い出していた。
「―――あ、うん、覚えてるよ。―――わかった。じゃ、1時にね」
短い会話を終え電話を切ると、じろりと西門さんがあたしを睨んだ。
「なんだよ、1時って、あいつと約束あんの?」
「うん、静さんの誕生日プレゼント、一緒に選びに行こうって言ってたの」
「俺は知らねえぞ、そんな話」
「そう?結構前から類とは約束してたんだよ」
「―――じゃ、今日は俺と一緒にいらんないってこと?」
拗ねたような言葉。
だけど、先に約束していたのは類だし―――。
「類も最近忙しいみたいだし、もう誕生日まで日がないから―――」
「だからって、彼氏放って、別の男とデート?」
「デートじゃないよ。買い物するだけ」
「2人きりでな」
「だって・・・・・じゃ、一緒に行く?」
「やだね。あいつムカつくし」
西門さんと付き合うようになって。
類は何かとあたしたちの邪魔をするようになった。
道明寺のときにはなかったことなのだけれど。
「とられたくなかったら、ずっと牧野を捕まえてればいいじゃん」
不敵に笑ってそう言う類に。
西門さんの眉がピクリとつり上がった。
あたしと類の関係はずっと変わらない。
だけど、道明寺の時と類の態度が違う理由はあたしにもわからない。
「俺は、牧野が幸せならそれでいいんだ」
相変わらずそう言って笑ってくれる類。
だからあたしは類を信じてる。
どんな理由だって、類があたしのことを考えてくれてるってことはわかってるから。
「帰ったら、電話する」
そう言って笑うと、西門さんも苦笑して。
「門限8時な」
チュッと、触れるだけのキスをした―――。
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