***恋心 55 〜総つく〜***



  うとうととまどろむ彼の腕の中。

どこからか、携帯の着信音が聞こえてきた。

「―――きの、牧野、お前の携帯」

西門さんの声に、目を開ける。

「ん―・・・・誰、こんな朝早く―――」

言いながら、ベッドの下にあったバッグの中から携帯を取り出す。

目をこすりながら開いた携帯の画面には『花沢類』の文字。

「―――類」

あたしの声に、西門さんがピクリと反応する。

「類?なんでこんな時間に」

「わかんないよ。―――もしもし」

携帯を耳に当て、類と話しながらそれを思い出していた。

「―――あ、うん、覚えてるよ。―――わかった。じゃ、1時にね」

短い会話を終え電話を切ると、じろりと西門さんがあたしを睨んだ。

「なんだよ、1時って、あいつと約束あんの?」

「うん、静さんの誕生日プレゼント、一緒に選びに行こうって言ってたの」

「俺は知らねえぞ、そんな話」

「そう?結構前から類とは約束してたんだよ」

「―――じゃ、今日は俺と一緒にいらんないってこと?」

拗ねたような言葉。

だけど、先に約束していたのは類だし―――。

「類も最近忙しいみたいだし、もう誕生日まで日がないから―――」

「だからって、彼氏放って、別の男とデート?」

「デートじゃないよ。買い物するだけ」

「2人きりでな」

「だって・・・・・じゃ、一緒に行く?」

「やだね。あいつムカつくし」

西門さんと付き合うようになって。

類は何かとあたしたちの邪魔をするようになった。

道明寺のときにはなかったことなのだけれど。

「とられたくなかったら、ずっと牧野を捕まえてればいいじゃん」

不敵に笑ってそう言う類に。

西門さんの眉がピクリとつり上がった。

あたしと類の関係はずっと変わらない。

だけど、道明寺の時と類の態度が違う理由はあたしにもわからない。

「俺は、牧野が幸せならそれでいいんだ」

相変わらずそう言って笑ってくれる類。

だからあたしは類を信じてる。

どんな理由だって、類があたしのことを考えてくれてるってことはわかってるから。

「帰ったら、電話する」

そう言って笑うと、西門さんも苦笑して。

「門限8時な」

チュッと、触れるだけのキスをした―――。







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