「そちら、どなた?」
上品な感じのとてもきれいな婦人があたしを見て微笑む。
あたしはぽかんとしてその人を見つめていた。
類が、あたしの肩を抱いた。
「俺の恋人」
その言葉に。
固まることたっぷり10秒。
「―――は!!?」
「まあ、そうなの。かわいらしいお嬢さんね」
夫人の顔が、嬉しそうにパーッと輝く。
「え、あの、あたしは―――」
「牧野つくしさん。同じ大学なんだ」
「そう。まあ、じゃあ早速準備しなくちゃならないわね。あの人にも報告を―――」
そう言うと、婦人はいそいそとどこかへ行ってしまった。
あたしはその姿が見えなくなったころようやく我に帰り―――
「ちょっと、これどういうこと!?花沢類!」
「あ、その呼び方懐かしい」
にっこりと、余裕の笑顔。
「そんなことどうでもいいってば!あの人は―――」
「俺の母親」
―――やっぱり!
どことなく、面影が似ていた気はしたのだ・・・・・。
「準備って、何?あの人って―――」
「婚約披露パーティーの準備。それから、フランスにいる父親に報告」
淡々と、冷静にそう言いだす類に。
あたしは、眩暈を感じた。
「聞いてない!」
「うん。言ってなかったし」
「なんで勝手に―――!」
「牧野に、逃げられないように」
「はあ!?」
「牧野と、ずっと一緒にいたいから―――一番早い方法を」
「早い方法って!」
「結婚しよう、牧野」
無邪気な天使の笑顔でそう言われて。
あたしは、開いた口が塞がらなかった―――。
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