***恋心 46 〜類つく〜***



  「そちら、どなた?」

上品な感じのとてもきれいな婦人があたしを見て微笑む。

あたしはぽかんとしてその人を見つめていた。

類が、あたしの肩を抱いた。

「俺の恋人」

その言葉に。

固まることたっぷり10秒。

「―――は!!?」

「まあ、そうなの。かわいらしいお嬢さんね」

夫人の顔が、嬉しそうにパーッと輝く。

「え、あの、あたしは―――」

「牧野つくしさん。同じ大学なんだ」

「そう。まあ、じゃあ早速準備しなくちゃならないわね。あの人にも報告を―――」

そう言うと、婦人はいそいそとどこかへ行ってしまった。

あたしはその姿が見えなくなったころようやく我に帰り―――

「ちょっと、これどういうこと!?花沢類!」

「あ、その呼び方懐かしい」

にっこりと、余裕の笑顔。

「そんなことどうでもいいってば!あの人は―――」

「俺の母親」

―――やっぱり!

どことなく、面影が似ていた気はしたのだ・・・・・。

「準備って、何?あの人って―――」

「婚約披露パーティーの準備。それから、フランスにいる父親に報告」

淡々と、冷静にそう言いだす類に。

あたしは、眩暈を感じた。

「聞いてない!」

「うん。言ってなかったし」

「なんで勝手に―――!」

「牧野に、逃げられないように」

「はあ!?」

「牧野と、ずっと一緒にいたいから―――一番早い方法を」

「早い方法って!」

「結婚しよう、牧野」

無邪気な天使の笑顔でそう言われて。

あたしは、開いた口が塞がらなかった―――。







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