「高校生の頃、10年後の自分なんて想像できなかったな」
あたしの言葉に、美作さんが顔を上げる。
「ん?そうか?」
「うん。だって―――まさか、美作さんと一緒にいるなんて」
その言葉に、軽く笑う美作さん。
「俺は、想像してたよ。お前とこうなること」
「ええ?本当に?」
「ん―――。あの月夜の夜に」
「月夜?」
「お前は覚えてないだろうけどな」
そう言って微笑むと、あたしの手を取り、手の甲に唇を寄せる。
その仕草がまるで王子様のようで、思わず見惚れる。
「――想像っていうより―――夢見てた、っていう方が正解だな」
「夢って―――」
「お前は、俺の夢。だから今の俺は、夢を手に入れられたってわけ」
「夢だなんて、大袈裟だよ。あたしが、美作さんと一緒にいたいと思ったんだから」
「それが夢だったんだよ。でも―――これからは、現実のものにしなきゃな」
「もう現実、でしょ?」
「―――ああ、そうだな」
優しいキスをして。
ふわりとあたしを抱きしめてくれる腕は、やっぱり優しかった・・・・・。
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