***恋心 44 〜類つく〜***



  「成人式の着物、総二郎に調達してもらったって」

何となく不機嫌顔の類。

「うん。レンタルなんだけどね、すごく安くしてもらっちゃって、助かったの」

「俺にだってそれくらいできる」

「あ―――でもほら、専門分野かなあと思ったから」

「着付けも、総二郎がするって?」

「だって、あたし着物の着付けなんかできないし」

「おれがやる」

「え?できるの?類」

「何とかなる」

「なんとかって―――」

「総二郎に、触れさせたくない」

そう言うと、隣に座っていたあたしの肩を引き寄せぎゅっと抱きしめられる。

「触れるって―――単なる着付けだよ」

「それでも嫌だ。着せるのも、脱がせるのも、俺の役目」

「な、何言ってるのよ、脱ぐのは自分で―――」

「俺が、する。今も―――」

気づけば、ブラウスのボタンを外されている。

「牧野に触れていいのは、俺だけ」

「ちょ―――待って、ここ、大学―――!」

いくら人気のない場所とはいっても、大学の敷地内でこんなこと!

「大丈夫」

「大丈夫じゃないよ!」

あたしの言葉なんて聞こえていないかのように、するりと類の手がブラウスの下に着ていたキャミソールの中に忍び込んでくる。

「牧野が悪い」

「なんで!!」

「総二郎と、浮気するから」

「してない!!」

「じゃ、証明して」

「証明って―――」

類の唇があたしの口を塞ぎ、声が遮られる。

舌が絡められ、すぐに深くなる口づけに、あたしの体から力が抜ける。

結局こうなっちゃうんだから―――

着物の着付け、西門さんにどう断ろうかと、あたしは考えはじめていた―――。







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