「成人式の着物、総二郎に調達してもらったって」
何となく不機嫌顔の類。
「うん。レンタルなんだけどね、すごく安くしてもらっちゃって、助かったの」
「俺にだってそれくらいできる」
「あ―――でもほら、専門分野かなあと思ったから」
「着付けも、総二郎がするって?」
「だって、あたし着物の着付けなんかできないし」
「おれがやる」
「え?できるの?類」
「何とかなる」
「なんとかって―――」
「総二郎に、触れさせたくない」
そう言うと、隣に座っていたあたしの肩を引き寄せぎゅっと抱きしめられる。
「触れるって―――単なる着付けだよ」
「それでも嫌だ。着せるのも、脱がせるのも、俺の役目」
「な、何言ってるのよ、脱ぐのは自分で―――」
「俺が、する。今も―――」
気づけば、ブラウスのボタンを外されている。
「牧野に触れていいのは、俺だけ」
「ちょ―――待って、ここ、大学―――!」
いくら人気のない場所とはいっても、大学の敷地内でこんなこと!
「大丈夫」
「大丈夫じゃないよ!」
あたしの言葉なんて聞こえていないかのように、するりと類の手がブラウスの下に着ていたキャミソールの中に忍び込んでくる。
「牧野が悪い」
「なんで!!」
「総二郎と、浮気するから」
「してない!!」
「じゃ、証明して」
「証明って―――」
類の唇があたしの口を塞ぎ、声が遮られる。
舌が絡められ、すぐに深くなる口づけに、あたしの体から力が抜ける。
結局こうなっちゃうんだから―――
着物の着付け、西門さんにどう断ろうかと、あたしは考えはじめていた―――。
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