気づくと、なぜかあたしは西門さんの膝の上に座らされていた。
ムード満点の静かな音楽が流れる店内には、体を寄り添って踊る男女たちが数人。
VIP席になってるレースのヴェールで仕切られた部屋には、あたしと西門さんの2人きり。
「―――何で?」
ようやくそれだけ口にして。
「あほか」
と呆れた口調の西門さんにむっとする。
「どこで引っかかったんだか知らねえけど、たちの悪い男どもに酒飲まされて、車に押し込まれる寸前だったんだぞ、お前」
「―――覚えてない」
確か、会社の人たちと飲んでたはず。
10時前には店を出て―――
そういえば、そのあと取引先の会社の社員とばったり会ったのまでは覚えてる。
同僚らしき男の人数人と一緒だったその人に声を掛けられて―――
すでにアルコールが回っていた状態で、だいぶテンションも上がってたかも―――
「あのな、男と飲むときはもっと用心しろよ!俺や類に連絡すりゃあすぐに飛んでくんのに」
「―――そこまで気が回らなかった。ごめん、助けてくれたの」
そう言って膝の上から慌ててどことするあたしの手を、西門さんがつかむ。
「助けたのかどうかは、わからねえな」
「は?」
「ここに着いた途端、俺に抱きついてキスしてきたの、覚えてないだろうけど」
にやりと笑う西門さんに、あたしは逆に青くなる。
「ウ、ウソ!!」
「マジで。色っぽい声で『帰りたくない』なんて囁かれたら、俺もぐらっとくるよ」
「ちょ、ちょっと待って、あたし全然―――」
覚えてないし!
「まさかお前に誘惑されるとは思ってなかったけど―――」
「してない!」
「俺をその気にさせた責任は、取ってくれるんだろうな、つくしちゃん?」
間近に迫るそのきれいな顔に。
あたしは逃げ道を失ったことを知った・・・・・。
|