最近ずっと俺をイライラさせている存在。
だけどそれを表には出さず、あいつに会う。
「なんだよ、今度は妊娠でもしたか?」
俺の言葉に、頬を染め俺を睨みつける牧野。
そんな女の顔を見るたびに、イライラするんだ。
らしくねえ。
1人の女に振り回されるなんて。
「そんなわけないでしょ。そうじゃなくて―――」
「じゃ、何。類とけんかでもした?」
類と司の間に挟まれて、困った牧野が頼るようになったのはなぜか俺。
相談相手ならあきらのが向いてると思うのに、なぜかこいつは俺のところに来る。
あきら曰く、「おれは甘やかしちまうから。お前の鞭のがいいんだろ?あいつMっ気ありそうじゃん」だそうだ。
おかげで、最近は女と遊ぶのもままならない。
それどころか。
あいつのために体を空けてる俺がいる。
2人の間で揺れ動いてるあいつに、イライラし始めたのはいつからだったのか。
会ってないときにまであいつのことを考えるようになってる。
「そろそろ、こういうのやめようぜ」
思いきって言えば、あいつの瞳が揺らいで。
「あの2人に恨まれるのはご免だ。どっちにするか、自分で決めろよ。俺を巻き込むな」
「―――ごめん」
悲しそうに眼を伏せる牧野。
そんな顔するな。
「相談するなら、俺よりあきらのが向いてる。あきらのとこに―――」
そこまで言ってあいつの顔を見れば、その瞳から涙が零れる瞬間で。
「―――牧野?」
俺の声にハッとする牧野。
慌てて涙を拭う。
「―――ごめん、もう―――連絡しない。会いに来たりしないから―――」
そう言ってくるりと向きを変え、駆け出そうとするあいつの手を。
俺は咄嗟につかんでいた。
震えるあいつの体を、後ろから抱き締める。
「―――何で泣く?」
「―――わかんない」
「―――じゃあ、わかるまでここにいろよ」
「だって―――」
「ちゃんと理由聞くまでは―――帰さない」
単なる勘違いかもしれない。
だけど、予感がしたんだ。
その涙は、俺のため―――
もしかしたら、俺と同じ気持ちかもしれないって―――
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