***恋心 40 〜総つく〜***



  最近ずっと俺をイライラさせている存在。

だけどそれを表には出さず、あいつに会う。

「なんだよ、今度は妊娠でもしたか?」

俺の言葉に、頬を染め俺を睨みつける牧野。

そんな女の顔を見るたびに、イライラするんだ。

らしくねえ。

1人の女に振り回されるなんて。

「そんなわけないでしょ。そうじゃなくて―――」

「じゃ、何。類とけんかでもした?」

類と司の間に挟まれて、困った牧野が頼るようになったのはなぜか俺。

相談相手ならあきらのが向いてると思うのに、なぜかこいつは俺のところに来る。

あきら曰く、「おれは甘やかしちまうから。お前の鞭のがいいんだろ?あいつMっ気ありそうじゃん」だそうだ。

おかげで、最近は女と遊ぶのもままならない。

それどころか。

あいつのために体を空けてる俺がいる。

2人の間で揺れ動いてるあいつに、イライラし始めたのはいつからだったのか。

会ってないときにまであいつのことを考えるようになってる。

「そろそろ、こういうのやめようぜ」

思いきって言えば、あいつの瞳が揺らいで。

「あの2人に恨まれるのはご免だ。どっちにするか、自分で決めろよ。俺を巻き込むな」

「―――ごめん」

悲しそうに眼を伏せる牧野。

そんな顔するな。

「相談するなら、俺よりあきらのが向いてる。あきらのとこに―――」

そこまで言ってあいつの顔を見れば、その瞳から涙が零れる瞬間で。

「―――牧野?」

俺の声にハッとする牧野。

慌てて涙を拭う。

「―――ごめん、もう―――連絡しない。会いに来たりしないから―――」

そう言ってくるりと向きを変え、駆け出そうとするあいつの手を。

俺は咄嗟につかんでいた。

震えるあいつの体を、後ろから抱き締める。

「―――何で泣く?」

「―――わかんない」

「―――じゃあ、わかるまでここにいろよ」

「だって―――」

「ちゃんと理由聞くまでは―――帰さない」

単なる勘違いかもしれない。

だけど、予感がしたんだ。

その涙は、俺のため―――

もしかしたら、俺と同じ気持ちかもしれないって―――







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