いつものメンバーで、クラブで飲んでいた。
あたしの席は美作さんの隣で。
でも、さっきから美作さんはあたしの方を見ようともしない。
なんで?
あたし、何か怒らせるようなことした?
こっちを見て。
いつもみたいに笑ってよ。
なんだか泣きたくなってきて。
席を移動しようかと思った時。
ふと、あたしの手を暖かな手が包む。
「―――!」
驚いて隣の美作さんを見上げれば、ちらりとあたしを見て。
また、視線を戻す。
「移動しようとか、するなよ?」
誰にも聞こえないくらいの小声で、そう言われて。
あたしは、小さく頷いた。
握られた手が熱い。
なんてげんきんなんだろう。
たったこれだけのことで、うれしくて仕方ないなんて。
「牧野、酔っ払った?顔、赤いよ」
前に座っていた類に言われ、思わず慌てる。
「え、そ、そう?」
声が裏返ってしまい、美作さんがぶっと吹き出す。
―――もう、ひどいっ
体を小さく震わせて笑ってる美作さんを、じろりと睨む。
そんなあたしたちを見て、西門さんと類が顔を見合わせる。
「―――お前ら、俺たちに何か隠してねえ?」
西門さんの言葉に、美作さんは慌てるでもなく肩をすくめる。
「別に。なあ?牧野」
今日、初めて笑顔を向けられて、あたしはなんだか舞い上がってしまった。
「う、うん・・・・・」
テーブルの下で繋がれた手に、力が込められる。
まだ、言いたくない。
だって、今がすごく幸せだから。
しばらくは、2人だけの秘密。
そうして、あたしもその手を握り返し、温もりを確かめた・・・・・。
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