***恋心 39 〜あきつく〜***



  いつものメンバーで、クラブで飲んでいた。

あたしの席は美作さんの隣で。

でも、さっきから美作さんはあたしの方を見ようともしない。

なんで?

あたし、何か怒らせるようなことした?

こっちを見て。

いつもみたいに笑ってよ。

なんだか泣きたくなってきて。

席を移動しようかと思った時。

ふと、あたしの手を暖かな手が包む。

「―――!」

驚いて隣の美作さんを見上げれば、ちらりとあたしを見て。

また、視線を戻す。

「移動しようとか、するなよ?」

誰にも聞こえないくらいの小声で、そう言われて。

あたしは、小さく頷いた。

握られた手が熱い。

なんてげんきんなんだろう。

たったこれだけのことで、うれしくて仕方ないなんて。

「牧野、酔っ払った?顔、赤いよ」

前に座っていた類に言われ、思わず慌てる。

「え、そ、そう?」

声が裏返ってしまい、美作さんがぶっと吹き出す。

―――もう、ひどいっ

体を小さく震わせて笑ってる美作さんを、じろりと睨む。

そんなあたしたちを見て、西門さんと類が顔を見合わせる。

「―――お前ら、俺たちに何か隠してねえ?」

西門さんの言葉に、美作さんは慌てるでもなく肩をすくめる。

「別に。なあ?牧野」

今日、初めて笑顔を向けられて、あたしはなんだか舞い上がってしまった。

「う、うん・・・・・」

テーブルの下で繋がれた手に、力が込められる。

まだ、言いたくない。

だって、今がすごく幸せだから。

しばらくは、2人だけの秘密。

そうして、あたしもその手を握り返し、温もりを確かめた・・・・・。







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