***恋心 37 〜総つく〜***



  パーティーは苦手。

ダンスも好きじゃない。

お酒は飲めるようになったけれど、男の人に勧められるのはやっぱり苦手だ。

「そろそろ帰ろうかな―――」

バルコニーに出て休んでいると。

「―――見つけた」

聞き覚えのある甘い声に、振り向こうとしてその動きを止められる。

後ろから腰に手をまわされて。

首筋に、弾んだ息がかかる。

「逃げんなよ」

黒いつややかな髪が、頬にかかる。

「―――西門さん。なんでここに―――」

「言っただろ?お前を、探してた。お前こそ、なんで逃げる?」

「それは―――」

「まだ―――忘れられないのか?あいつのこと―――」

「違うよ・・・・・そうじゃなくて・・・・・」

胸が、苦しい。

これ以上、近くにいたら―――

「―――ねがい、離して・・・・・」

体が震えてしまう。

「いやだね」

「西門さん―――!」

「もう、逃がさねえよ。お前を俺のものにするまで―――」

「やめて―――」

それ以上言わないで。

この人を好きになっちゃダメ。

きっと、苦しくなるから。

だから―――

「俺が、守る」

「え―――?」

「何があっても・・・・・どんなものからも、守ってみせる。だから―――俺のものになれよ」

こぼれた涙が、西門さんの手を濡らす。

ああ、もう。

もう、手遅れだ。

もう、こんなに、好きになっちゃってる―――







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