***恋心 35 〜あきつく〜***



  あたしの話に、ゲラゲラと涙を流して笑う美作さん。

あたしはそんな彼を恨めしそうに見た。

「笑い事じゃないよ。どう答えたらいいのか、本当に困ったんだから!」

美作さんのお母さんに『あきら君の赤ちゃんを産んでほしい』なんて言われて。

返事に困ったあたしは、適当に話をそらせて、逃げるようにその場を後にしたんだ。

「いいじゃん、俺の赤ちゃん、産んでよ」

クックッと笑いながらも意味深な視線を向ける美作さんに、ドキッとする。

「な、何言ってんのよ、ふざけないで」

「―――ふざけてないって言ったら?」

「―――え?」

「本当に―――俺の子を生んでほしいって言ったら、お前はどうする?」

「どうするって―――」

穏やかな笑みを浮かべたその表情は、本気なのかふざけているのか―――

あたしにはそれを見破るすべもなくて。

ただ、騒がしく音を立てる胸をおさえながら。

ただ、美作さんを見つめ返すことしかできなかった―――







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