***恋心 33 〜あきつく〜***



  「牧野!!」

血相を変えて部屋に飛び込んできた美作さんに、あたしの方がギョッとする。

「どうしたの?」

「どうしたのって―――お前が事故にあったって聞いて!大丈夫なのか!?」

その言葉を聞いて、あたしはそばにいた西門さんと類をじろりとにらむ。

「ちょっと―――」

「おれはただ、お前が車にはねられたって言っただけだぜ?」

西門さんが言えば、類も肩をすくめて

「おれも、今日は大学の講義出れないって言っただけ」

としれっとしている。

「もう!はねられたんじゃなくてちょっとかすっただけで、大したことないって言ったのに!大学だって、類が病院に行った方がいいって強引に車に乗せるから―――」

「じゃあ、大丈夫なのか?」

まだ心配そうに聞く美作さんに、両手を広げて見せ。

「このとおり。ちょっと肘をすりむいただけで、全然大丈夫。午後からは大学に―――」

そこまで言った時、ふわりと美作さんの腕に包まれる。

「―――よかった」

「み、美作さん―――」

「おまえに何かあったら―――俺も正気じゃいられないとこだった」

大袈裟。

でも、うれしくて。

思わず涙が出そうになった。

気がつけば、西門さんと類は部屋からいなくなっていて。

美作さんの優しい腕に身を預け。

その温もりを確かめていた―――。







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