「ねえ、つくしちゃん」
その猫なで声に、ちょっとぞくりとする。
美作さんのお母さん。
相変わらず若くてかわいいのだけれど。
最近、よくここ、美作邸に遊びに来るあたしを妙に気に入ってくれて、ケーキなど焼いてお茶に招待してくれたりするのだ。
「お願いがあるのだけれど」
「お願い―――ですか?」
「ええ。もちろん、無理にとは言わないけれど」
そのにこやかな表情が、妙に怖いのだけれど。
「な、何でしょう?」
「つくしちゃん、あきら君のこと好きよねえ?」
「―――ええと、まあ、その、お友達ですし―――」
お友達、という言葉にかぶさるように、お母さんがパンと手を打つ。
「よかった!それなら問題ないわね!」
「あ、あの―――」
なんだか、いやな予感がした。
「お願いっていうのは他でもないのだけれど」
「はい・・・・・?」
「あきら君の赤ちゃんを、産んではくれないかしら?」
その言葉を理解するまでに、あたしはたっぷり1分間、固まっていたのだった・・・・・。
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