***恋心 32 〜あきつく〜***



  「ねえ、つくしちゃん」

その猫なで声に、ちょっとぞくりとする。

美作さんのお母さん。

相変わらず若くてかわいいのだけれど。

最近、よくここ、美作邸に遊びに来るあたしを妙に気に入ってくれて、ケーキなど焼いてお茶に招待してくれたりするのだ。

「お願いがあるのだけれど」

「お願い―――ですか?」

「ええ。もちろん、無理にとは言わないけれど」

そのにこやかな表情が、妙に怖いのだけれど。

「な、何でしょう?」

「つくしちゃん、あきら君のこと好きよねえ?」

「―――ええと、まあ、その、お友達ですし―――」

お友達、という言葉にかぶさるように、お母さんがパンと手を打つ。

「よかった!それなら問題ないわね!」

「あ、あの―――」

なんだか、いやな予感がした。

「お願いっていうのは他でもないのだけれど」

「はい・・・・・?」

「あきら君の赤ちゃんを、産んではくれないかしら?」

その言葉を理解するまでに、あたしはたっぷり1分間、固まっていたのだった・・・・・。







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