***恋心 27 〜あきつく〜***



  華やかなパーティーの席で、なぜか彼は仏頂面。

眉間に皺を寄せたまま、シャンパングラスを傾けていた。

「そんなに、怒らなくったって」

あたしの言葉に、じろりと冷たい視線。

「怒ってるんじゃない。呆れてるんだよ。無防備過ぎる彼女に」

いつもは穏やかな美作さんが不機嫌な理由はこのあたし、らしい。

普通、パーティーの花って言ったらきれいな女の人なのに。

女性以上にきれいなこの人はまさにパーティーの花。

そんな美作さんと踊りたがる女の人は後を絶たなくて、それを断るのに手いっぱいだった彼。

その間に、あたしは知らない男の人にダンスに誘われて。

もちろん断ったのだけれど、その人は強引にあたしの手を引きホールの真ん中まで進み出た。

そして戻ろうとするあたしの腰を引き寄せ、曲に合わせて踊ろうとした瞬間―――

突然あたしの腕を取り、その男の人から引きはがしたのは―――美作さん。

何も言わずその人を一睨みして、あたしの腕を掴んだままずんずんと歩く彼の背中は。

言いようのない黒いオーラに包まれていた・・・・・。

「俺以外の奴とは、踊らせない」

その甘い言葉に、どきんと胸が高鳴る。

「お―――踊ってないよ」

あたしだって、美作さん以外の人と踊る気なんかない。

それよりも。

仕方ないとわかってはいても、あたしだって美作さんがあたし以外の人と踊るところなんて見たくない。

そう思っても口に出せないあたしは、意地っ張りなんだろうけど。

「―――言いたいことがあるならちゃんと言えよ」

じっとあたしを見つめる美作さんの目は真剣で。

「―――別に」

「じゃあ俺が言ってやろうか?―――妬いてるんだろ?」

憎たらしいくらい余裕の彼に、あたしは悔しくて、上目遣いに睨みつけるしかなくて。

だけどそんなあたしに向けられる彼の眼はどこまでも優しくて。

ふっと零れた笑みはすごくうれしそうで。

「そう思ってくれるのは、すげえうれしいよ。だから―――俺は他の女とはもう踊らない」

「え―――」

「その代わり、お前も他の奴とは踊るな。お前は―――永久に、俺のパートナーだからな」

素早く、掠めるようにして奪われたキス。

そのキスと、言葉の意味を理解する頃には―――あたしは彼の腕の中にいた・・・・・。







お気に召しましたらクリックしていってくださいね♪