「クリスマスに仕事ってなんだよ」
不機嫌な西門さんの視線に、気付かない振りして紅茶をすする。
「だって、平日じゃん」
「残業まですることないだろ?」
「しょうがないでしょ、向こうが24日の夜しか空いてないって言うんだもん」
大切な取引なのだ。この機会を逃したら、またいつチャンスが来るかわからない。
「―――何時まで?」
「わかんないよ。向こう次第」
「相手は?」
「は?」
「さっきからずっと気になってんだよ。お前、その相手の話になると俺と目え合わせないし」
やっぱりばれてる。
あたしとしても言ってしまいたいのは山々なんだけど・・・・・。
「気のせいでしょ」
「じゃあ言えよ。誰との取引だよ?」
「だから、取引先の会社の―――」
「あきらだろ」
その言葉に、あたしは思わず目を見開く。
「やっぱりな」
「なんで―――」
「俺をなめんなよ。で、なんで隠してるわけ?」
「・・・・・西門さんには、黙ってろって、美作さんが」
すっと細められるその鋭い視線に。
あたしの背中を冷たい汗が流れて行く。
「―――クリスマスの夜に、あきらと会うって?俺に内緒で?」
「し、仕事だし」
「それで、俺が納得するとでも?」
―――思ってないけど。でも―――
「―――あたしのことが、心配?」
逆に聞き返してみれば、西門さんは驚いたように目を瞬かせる。
「美作さんが―――クリスマスに会うなら、取引するって」
「お前―――それがどういう意味かわかってる?」
「でも―――それで取引成立するんなら、あたしはそうする」
あたしの言葉に、むっと顔を顰める西門さん。
「それで―――その後、西門さんに会いに行く」
「俺は2番手?」
「美作さんがね、たまには総二郎を待たせろって」
「は?」
「いつもあたしがやきもきしてる分―――西門さんにも心配させろって」
「おい―――」
「高級ホテルのディナー、ご馳走してくれるって」
「お前―――」
「クリスマスイブが、終わる前に迎えに来てね」
にっこりと笑って見せれば。
降参、と両手を上げる。
「覚えてろよ」
そんな宣戦布告も忘れずに・・・・・。
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