離れていると不安で。
その不安に押しつぶされそうにある時がある。
寂しさを紛らわそうとして、バイトに明け暮れる日々。
だけど、ふとした瞬間に。
たとえば、家に帰る道を1人で歩いているときに。
やっぱり頭に思い浮かんでしまうのはあいつのことで―――
ここに残るって決めたのはあたしなのに。
気付いたら、頬を涙が伝ってる。
「―――もう、顔忘れちゃうよ」
忘れるはずない。
「声だって、忘れちゃうんだから」
ずっと耳に残ってる。
「いい男は他にもいるんだから」
でも、あいつ以上にいい男なんて、あたしは知らない。
「早く―――帰ってきなさいよ、馬鹿」
「バカに馬鹿って言われたかねえぞ」
後ろから抱き締められて。
忘れるはずのないそのぬくもりに、涙が溢れ出す。
「―――あんたほど馬鹿じゃないわよ」
「その馬鹿を―――待ってたんだろ?」
耳元に響く低音が、あたしの胸を揺さぶる。
「これ以上―――もう待てないんだから」
「だから―――攫いにきた。他の奴に、先越される前に―――」
「誰のことよ。あたしのこと攫いに来るなんて―――あんたしかいないじゃない」
向き合って、見つめあう。
潤む瞳に映るあいつは、切なげにあたしを見つめてて。
何も言わずに唇を重ねた。
言葉がなくても、思いが伝わってくる。
―――ずっと、会いたかった―――
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