慣れないパーティーで、あたしは壁の花。
そして頬を染めながら女性たちが視線を送る人に、昔の記憶がよみがえる。
相変わらず華麗なステップを踏んで。
肩まで伸びた髪が、ターンするごとにさらりと流れ、また女性を魅了する。
次は誰と踊るの?
もしかしたら誘われるかもしれない。
誰もがそんな期待に胸をふくらませ、彼を見つめていた。
曲が終わり、彼がパートナーを務めた女性に笑顔を向け、そしてくるりと背を向け歩き出す。
いつまでも彼を見つめる女性に、でも彼は振り向きもしない。
そして、その足は真っ直ぐにあたしの方へ―――。
「久しぶり」
大人っぽく、艶を増した笑顔を向けられて。
うまく視線を合わせられない。
「き―――気づいてたんだ」
「当たり前だろ?お前を忘れるはずない」
美作さんの声が、甘く響く。
「踊ろう」
差し出された手に、でもあたしは戸惑って。
「あたし、ダンスなんて―――」
「教えてやるよ。知ってるだろ?俺がそういうの得意なの」
「で、でも、みんな美作さんと踊りたがって―――」
「俺は、お前と踊りたいんだけど?」
優しい瞳が、熱を帯びたような気がした。
「―――あたしで、いいの?」
「そう言ってるだろ?お前がいい。―――壁の花なんて、もったいないぜ。そんなにきれいなのに」
褒められて。
その気になってもいいのかな。
その手を取って。
その甘い瞳で、あたしだけを見つめてくれるって―――
期待しても、いいですか―――?
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