***恋心 20 〜あきつく〜***



  慣れないパーティーで、あたしは壁の花。

そして頬を染めながら女性たちが視線を送る人に、昔の記憶がよみがえる。

相変わらず華麗なステップを踏んで。

肩まで伸びた髪が、ターンするごとにさらりと流れ、また女性を魅了する。

次は誰と踊るの?

もしかしたら誘われるかもしれない。

誰もがそんな期待に胸をふくらませ、彼を見つめていた。

曲が終わり、彼がパートナーを務めた女性に笑顔を向け、そしてくるりと背を向け歩き出す。

いつまでも彼を見つめる女性に、でも彼は振り向きもしない。

そして、その足は真っ直ぐにあたしの方へ―――。

「久しぶり」

大人っぽく、艶を増した笑顔を向けられて。

うまく視線を合わせられない。

「き―――気づいてたんだ」

「当たり前だろ?お前を忘れるはずない」

美作さんの声が、甘く響く。

「踊ろう」

差し出された手に、でもあたしは戸惑って。

「あたし、ダンスなんて―――」

「教えてやるよ。知ってるだろ?俺がそういうの得意なの」

「で、でも、みんな美作さんと踊りたがって―――」

「俺は、お前と踊りたいんだけど?」

優しい瞳が、熱を帯びたような気がした。

「―――あたしで、いいの?」

「そう言ってるだろ?お前がいい。―――壁の花なんて、もったいないぜ。そんなにきれいなのに」

褒められて。

その気になってもいいのかな。

その手を取って。

その甘い瞳で、あたしだけを見つめてくれるって―――

期待しても、いいですか―――?







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