「ね、ねえ」
「ああ?」
「手―――」
道明寺と繋がれた手が、熱い。
「そろそろ、離して―――」
「なんで?いいだろ、手ぇ繋いで歩くくらい」
「だって―――さっきから注目の的、だよ」
渋谷の人込みで、一際目立つこの男。
なんであんな子が、というようにさっきから睨まれてるあたし。
「その注目の的の中―――自分からキスしたのはどこの誰だよ」
「そ、それは―――!」
だって、悔しかったから。
待ち合わせの場所で、かわいい女の子に逆ナンされてた道明寺。
気のなさそうな瞳を向けて、冷たい言葉で彼女を追い払っていたけれど。
それでも女の子たちの視線を集める道明寺に。
悔しくてつい、勢いのまま自分からキスをしてしまった。
驚き、一瞬固まる道明寺が、次の瞬間には最高に幸せそうに微笑んで。
見惚れてる間に抱きしめられて、我に返った。
だって、しょうがないよ。
めちゃくちゃ、好きなんだもん。
その目に、あたし以外の人を映してほしくないの。
「―――お前にそんなことされたら、俺だって普通じゃいられないって、わかってねえだろ」
微かに頬を染めて。
それでも、その手は離さずに。
あたしたちは、歩き続けた―――。
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