「何もなかったよ」
「2人きりで一晩過ごして?しかも、手ぇ繋いでたのに?」
類はすっかり疑りの目だ。
お酒というものは恐ろしい。
バイト帰りにバイト仲間と飲みに行って。
そこで偶然西門さんに会った。
そこまでは覚えてるけれど。
その先のことは、まったく思い出せない。
気づいた時にはあたしのアパートで、西門さんと2人手を繋いで寝ていたのだ。
同じ布団に入り、しかも悪いことに西門さんはパンツ一丁。
あたしもなぜかキャミソールにパンツという格好で―――
だけど、何もなかった、はず。
いくらあたしが鈍くっても、何かあればわかるはずで―――
それを何とか類に納得してもらおうと必死になっているときに、この男は。
「牧野って、いい匂いするんだな。結構出るとこ出てるし」
―――絶対わざとだ!
あたしは口をパクパクさせながら、西門さんを睨みつけたのだった―――。
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