つい、うとうとしていた。
いつもの非常階段で。
ふと、唇に柔らかい感触。
目を開けると、目の前に花沢類のきれいな睫毛。
「―――なんで」
「したくなったから」
「だから!そういう理由でキスしないでって―――!」
「じゃあ、どういう理由ならいいの?」
「!!」
「好きだって、言えばいい?牧野が、好きだからキスしたって」
いつもと違う、ちょっと強気な花沢類に。
あたしの胸がどきどきと騒ぎ出す。
「好きだよ、牧野が。だから、キスした」
「花沢類、あたしは―――」
「―――もう、司に遠慮するのはやめたんだ」
「道明寺と―――何かあったの?」
「それは、牧野でしょ。司と―――また喧嘩したんじゃないの?」
ドキンと心臓が鳴る。
そんなに腫れぼったい目をしてるのかと思って、思わず目をそらす。
「もう―――我慢できないよ」
類の声が、切なげに響く。
「そんな風に泣いてばかりいる牧野を、放っておけない」
「類―――」
「牧野は、俺が―――幸せにする」
そうして近づいてくる類を。
あたしは、拒むことができなかった。
やがて2つの影が重なり・・・・・・
今度は。
触れるだけのキスでは、終わらなかった・・・・・。
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