***恋心 12 〜あきつく〜***



 
その手を握っちゃいけない。

その体に触れちゃいけない。

触れればきっと、戻ることができなくなるから―――

そうして俺は自分にブレーキをかけてるってのに。

こいつはなんだってこうなんだろう。

月明かりの下、涙を流していた牧野に。

俺は、つい手を伸ばしてやりたくなる。

「どうした?」

「美作さん・・・・・」

「司と、何かあったか?」

「・・・・・もう、だめ」

「何言ってんだよ。お前なら大丈夫だって」

俺の言葉に、首を横に振る。

「―――何かあったなら、相談には乗るぜ」

それが俺の役目。

ずっとそう思っていたのに。

牧野の瞳が切なげに揺れる。

頼むから、そんな目で見るな―――。

「もう、道明寺とはやっていけない」

「おい―――」

「あたしは、美作さんが好きなの」

告げられた言葉が信じられなくて。

俺はすぐに言葉を発することができなくて。

「―――ごめん、迷惑だったね」

そう言ってくるりと向きを変え、行ってしまおうとするあいつの手を。

反射的につかまえていた。

「―――行くな」

後ろから、あいつの小さな体を抱きしめる。

「俺の気持ちも―――ちゃんと言わせろよ」

「だって―――」

「俺も―――好きだよ、お前が―――」

一度触れてしまったら―――

もう、離すことなんかできない―――







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