その手を握っちゃいけない。
その体に触れちゃいけない。
触れればきっと、戻ることができなくなるから―――
そうして俺は自分にブレーキをかけてるってのに。
こいつはなんだってこうなんだろう。
月明かりの下、涙を流していた牧野に。
俺は、つい手を伸ばしてやりたくなる。
「どうした?」
「美作さん・・・・・」
「司と、何かあったか?」
「・・・・・もう、だめ」
「何言ってんだよ。お前なら大丈夫だって」
俺の言葉に、首を横に振る。
「―――何かあったなら、相談には乗るぜ」
それが俺の役目。
ずっとそう思っていたのに。
牧野の瞳が切なげに揺れる。
頼むから、そんな目で見るな―――。
「もう、道明寺とはやっていけない」
「おい―――」
「あたしは、美作さんが好きなの」
告げられた言葉が信じられなくて。
俺はすぐに言葉を発することができなくて。
「―――ごめん、迷惑だったね」
そう言ってくるりと向きを変え、行ってしまおうとするあいつの手を。
反射的につかまえていた。
「―――行くな」
後ろから、あいつの小さな体を抱きしめる。
「俺の気持ちも―――ちゃんと言わせろよ」
「だって―――」
「俺も―――好きだよ、お前が―――」
一度触れてしまったら―――
もう、離すことなんかできない―――
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