牧野が、幸せならそれでよかった。
牧野が笑っていてくれるなら、それで。
だから、牧野を泣かせる奴は許せなかった。
「どうして泣いてるの?」
非常階段で、1人涙を流している牧野を見つけた時。
また、司と何かあったんだと思った。
「自分が、許せなくて」
大きな瞳を潤ませ、うつむく牧野。
さっきから、俺の目を見ようとしないのはどうして?
「なんで?司と何かあったんじゃないの?」
「―――あたしの、せいなの」
「だから、なんで?」
俺の言葉に答えようとせず、首を振る牧野に。
俺の胸が痛む。
「俺には言えないこと?じゃあどうしてここにいるの?」
「―――ごめん・・・・・」
「謝ってほしいんじゃないよ。俺は・・・・・牧野に笑っててほしいんだ。そのためなら何でもする。だから、1人で抱え込むなよ」
そっと髪に手を伸ばせば、びくりと震えるからだ。
ゆっくりと、顔をあげて俺を見つめる。
その瞳に。
何か期待させられるような予感がして。
「―――じゃあ、あたしの傍にいて」
牧野の言葉に、目を見開く。
「あたしを、笑顔にできるのは、類だけなんだよ」
涙が、きらきらと宝石のように輝いていた。
「―――おれで、いいの?」
「類じゃなきゃ、だめなの。あたしには―――類が必要なの」
次の瞬間には、俺は牧野を腕の中にとらえていた。
なんでもできる。
牧野のためなら。
牧野が俺を必要とするなら。
一生だって傍にいるよ・・・・・。
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