***恋心 11 〜類つく〜***



 
牧野が、幸せならそれでよかった。

牧野が笑っていてくれるなら、それで。

だから、牧野を泣かせる奴は許せなかった。

「どうして泣いてるの?」

非常階段で、1人涙を流している牧野を見つけた時。

また、司と何かあったんだと思った。

「自分が、許せなくて」

大きな瞳を潤ませ、うつむく牧野。

さっきから、俺の目を見ようとしないのはどうして?

「なんで?司と何かあったんじゃないの?」

「―――あたしの、せいなの」

「だから、なんで?」

俺の言葉に答えようとせず、首を振る牧野に。

俺の胸が痛む。

「俺には言えないこと?じゃあどうしてここにいるの?」

「―――ごめん・・・・・」

「謝ってほしいんじゃないよ。俺は・・・・・牧野に笑っててほしいんだ。そのためなら何でもする。だから、1人で抱え込むなよ」

そっと髪に手を伸ばせば、びくりと震えるからだ。

ゆっくりと、顔をあげて俺を見つめる。

その瞳に。

何か期待させられるような予感がして。

「―――じゃあ、あたしの傍にいて」

牧野の言葉に、目を見開く。

「あたしを、笑顔にできるのは、類だけなんだよ」

涙が、きらきらと宝石のように輝いていた。

「―――おれで、いいの?」

「類じゃなきゃ、だめなの。あたしには―――類が必要なの」

次の瞬間には、俺は牧野を腕の中にとらえていた。

なんでもできる。

牧野のためなら。

牧野が俺を必要とするなら。

一生だって傍にいるよ・・・・・。







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