まただ。
いくら隣の席だからって、近過ぎだっつーの!
さっきから、もう3回目。
三浦が黒沼に話しかけた回数。
そのたびに、俺のイライラが増していく。
艶やかな黒髪が、光に反射してすごくきれいだった。
それを見ているだけでもドキドキしてしょうがないってのに。
三浦の奴は、いとも簡単に黒沼に触れる。
机の上に目を落とした拍子にその長い黒髪が顔にかかる。
その髪にさりげなく手を伸ばし、耳にかけてやる三浦。
『ガタンッ』
もう我慢できない。
「風早、どうした?」
先生が驚いて俺の方を見るが、気にしてる場合じゃない。
俺はつかつかと黒沼の席の方へ歩いて行くと、ぎろりと三浦を睨みつけた。
「風早くん・・・・・?」
黒沼が、不思議そうに俺を見上げている。
「―――黒沼に触わんな」
「へ?俺?」
「黒沼は、俺の。馴れ馴れしく、触れてんじゃねえよ!」
ぽかんと口を開ける三浦と。
頬を真っ赤に染めて俺を見つめる黒沼と。
そして、一瞬の間の後冷やかすような口笛と黄色い声。
そんなのも、気にならないくらい。
俺には、黒沼しか目に入ってなかった―――。
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