いつの間にか、期待してるあたしがいて。
「髪、伸びたね」
そっと髪に触れる手に、ドキッとする。
「切ろうか?」
「―――ここで?」
あたしの言葉ににっこりと笑い、カッターを出して見せる花沢類。
いつものパターンに思わず吹き出す。
「どのくらい切る?いつもみたいに肩くらい?」
「花沢類に任せるよ」
「―――じゃあ、毛先だけにしとこうかな」
「え?なんで?」
「それなら、またすぐに切りたくなるだろ?」
そう言って微笑む花沢類の瞳は少し切なげで。
あたしの胸が締め付けられる。
「そしたら、またすぐに牧野に会える」
「―――そんなの、なくたっていつも会ってるよ」
「理由ができるだろ?」
「理由がなくちゃ・・・・・会っちゃいけないの?」
「俺は会いたいよ、いつだって。でも―――」
「あたしだって、会いたいよ、花沢類に」
ちょっと、見開かれる瞳。
「―――それはどういう意味で?俺をからかってる?」
「違うよ。あたしが・・・・・花沢類に会いたいと思っちゃいけないの?」
「そうじゃないけど―――本気で?」
まじまじと見つめられ、なんだか照れくさくなる。
「もう、いいよ。帰る」
「待って。まだ髪切ってない」
手首をつかまれ、そのまま引き寄せられる。
「―――理由をつくる必要ないってことだよね」
腰に回る手に、きゅっと力が込められる。
「それなら―――今日は髪切らないで、2人でどこかに行こう」
「―――どこに?」
「―――天国みたいに、気持ちのいいところ」
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