黒沼と、何度目かのデート。
私服の黒沼は、制服の時とは雰囲気がまるで違っていて。
いつもドキドキしてしまう。
今日は一体どんな黒沼を見せてくれるんだろう。
そんな風に思いながら待ち合わせ場所に向かうと。
先に来ていた黒沼の姿が目に入り、俺は足を止めた。
長い黒髪が風になびいて、日の光で輝いて見えた。
淡い水色のワンピース。
手に持ったちょっと大きめのバスケットにはきっと今日も手作りのお弁当が入っているんだろう。
透き通るような白い肌に、胸が高鳴る。
いつもよりも明るい雰囲気に、通り過ぎる人がたまにちらりと黒沼を振り返る。
俺は慌てて黒沼の傍に駆け寄った。
「黒沼!」
俺の声にこちらを向き、微笑む黒沼。
「風早くん、おはよう」
その笑顔にホッとして。
でも落ち着かなくて。
その手を握った。
ぽっと染まる頬。
ちょっと恥ずかしいけど。
でも、離したくない。
俺以外にその笑顔を見せないでほしい。
そんな気持ちが、隠しきれなくて。
「行こう」
ゆっくりと歩き出す。
「うん」
隣に並んだ黒沼の髪が、風に揺れて俺の腕をくすぐる。
そんなことも嬉しくてしょうがない。
だから、ずっとこのままでいたい。
ずっと手を繋いで。
その瞳まで、1人占めしたいから・・・
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