It wants to approach you.
「ねえ、大丈夫?」
突然、ひょいと木村の顔を覗き込んできた女の子―――毛利蘭。
「え?あ、ああ・・・」
至近距離に現れた蘭の顔にドキドキしながら、木村は思わず顔を赤らめる。
「顔色、良くないけど・・・。具合、悪いんじゃない?」
小首を傾げ、心配そうな顔をする蘭から、目が離せない。
―――可愛いなあ・・・。
「いや、大丈夫だよ。ちょっと風邪気味なだけで、大した事ねーし」
本当はかなり辛かったのだが、無理をして笑う木村をじっと見ていた蘭は・・・
「そう?でも―――」
そう言って、白いきれいな手を木村の額に当てた。
ドキン
心臓が大きな音を立てる。と同時に―――
「蘭!」
どこから見ていたのか。蘭の幼馴染、工藤新一が駆け寄ってくる。が、蘭はそれを気にも止めず顔を
顰めて、
「やっぱり!木村君、熱あるよっ」
「え・・・そ、そうか?」
「んもう、気付かなかったの?ほら、保健室行こう!」
蘭が、椅子に座っていた木村の腕を引っ張る。
「え、や、でも俺、今日は部活にどうしても出なくっちゃ・・・」
「なに言ってるの!自分の身体のほうが大事だよ?ほら、行こうっ」
蘭がぐいっと腕を引っ張り、木村を立たせて、自分の体で木村を支えるように体を密着させた。
―――うわ、胸が腕に・・・
その柔らかい感触に、思わず赤面する―――と、突然後ろから反対の腕をグッと引っ張られる。
「新一?」
蘭が、漸く新一を見た。
「俺が連れて行くよ」
新一の低い声。
―――あ、こいつ、妬いてやがるな。
木村がチラッと新一を見ると、不機嫌な新一の視線とぶつかった。
「そう?じゃあわたしも付き添うね。一応保健委員だし」
蘭はニッコリ笑うと、先に立って歩き出した。
「38.3℃・・・結構あるわね。今日は帰ったほうがいいわよ」
保健の先生に言われ、仕方なく頷く。
「大丈夫?木村君。1人で帰れる?」
蘭が心配そうに木村の顔を覗き込む。と、新一が横から
「タクシー、呼んでやるよ。蘭、オメエこいつの鞄もって来てやれよ」
「あ、うん、分かった。じゃあ木村君、少しベッドで休んでなよ」
そう言い残し、蘭は保健室を出ていった。
新一は木村をチラッと見て、
「寝てろよ。今電話すっから」
と言って、携帯電話を取り出した。
「ああ―――ワリィな」
木村はおとなしくベッドに横になり、電話をかけている新一の顔を盗み見た。
―――全く、厄介だよなあ。せっかく毛利と接する機会があったって、必ずこいつが出てきて邪魔す
るんだからな・・・。
帝丹高校に入って、一番良かったと思ったこと―――それは、蘭と同じクラスになれたこと。入学式
の日に一目惚れし、ずっとその姿を見つめてきた。さらさらの長い髪、大きな瞳、桜色の唇・・・。何
もかもが魅力的で―――。
そんな蘭に思いを寄せているのは木村だけではなかったが―――いつもそんな男たちに睨みをきかせ
、蘭の隣をキープしている男―――それが工藤新一だった。蘭の幼馴染だという新一は、当然のように
蘭と一緒に登下校し、その名を呼んでいる。蘭は気付いていないようだが、新一が蘭を好きだというこ
とは一目瞭然で―――新一が側にいる限り、蘭に近づくのは至難のわざと思われていた。
それが、少し変わってきたのは最近のこと。新一がある事件を解決したのをきっかけに高校生探偵と
して有名になり、今ではちょくちょく警察に呼び出され、もともと成績の良かったこともあり学校側も
警察側の要請を承諾しているのだ。
このときとばかり、新一のいないときを狙って蘭に迫る男の多いこと―――。だが、超がつくほど鈍
感な蘭はそんなことには気付かず、はっきり告白しても、やんわりと断られ・・・。未だ蘭のハートを
掴む男は現れていなかった。
木村も、まだ告白こそしていないものの、アプローチだけは他のやつらに負けじとしているつもりだ
ったが・・・蘭がそれに気付く様子はなく・・・。
―――あ―あ、もし今日工藤のやつがいなかったら、スゲエチャンスだったのに・・・。こういうと
きに限っているんだよなあ・・・。
木村は、深々と溜息をついた。新一は、そんな木村を何か言いたげにじっと見ていた・・・。
「あ、蘭、木村君どうしたの?」
蘭が教室に戻ると、園子が話し掛けてきた。
「なんか、熱があるみたいだから、今新一がタクシー呼んでるの。―――これ、木村君のよね?」
「うん。新一君が持って来いって言ったの?鞄」
「うん。じゃ、わたしもう1回保健室行って来るね」
木村の鞄を持って、再び教室を出て行く蘭を見送って、
―――木村君もかわいそうに。せっかく蘭が付き添ってくれるとこだったのにね。
と園子は思った。さっきの一部始終をずっと見ていた園子は、思わず木村に同情してしまったのだ。
―――木村君て結構イイ男だからちょっと狙ってたんだけど・・・。彼、蘭のことしか眼中にないん
だものね。いつも蘭のこと目で追っててさ。あの熱い視線に気付かないなんて、蘭の鈍感さもかなりの
モンよね。―――ま、でも、あの新一君が相手じゃね。さっきだって蘭が木村君の側に行ったときから
ずっとそっちの様子伺っててさ・・・。蘭が木村君の額に触ったときの慌てぶりったら・・・。可笑し
いったらなかったわ。ホンットあやつってばヤキモチやきなんだから。さっさと告っちゃえば良いのに
ね。蘭にははっきり言わなきゃわかんないのに・・・。
「お待たせ、新一、タクシー呼んだ?」
保健室のドアが開き、蘭が顔を出した。
「ああ、10分くらいで来るってよ」
「そう。木村君、これ・・・」
と、蘭は鞄を木村に渡した。木村はベッドに体を起こし、それを受け取った。
「サンキュ、毛利」
「ね、お家の人いるの?1人で大丈夫?」
「ああ、母親がいるから。さっき、工藤の携帯貸してもらって、電話しといたから平気だよ」
「そう、良かった」
蘭は心底ホッとしたように微笑んだ。その笑顔が可愛くて、思わず見惚れていると
「蘭、オメエ教室戻ってろよ。授業、始まるだろ?」
「え?でも―――」
「後はタクシーが来たらこいつ連れてくだけだろ?俺がやるから、オメエは良いよ」
「そう?じゃあ・・・木村君、気を付けてね」
「ああ、サンキュー」
蘭はもう一度笑うと、保健室から出ていった。
―――あ―あ、いっちまった。
がっかりして、溜息をつくと―――新一が、横目で木村を見た。
「な、なんだよ」
「―――別にっ」
ふいっと顔を背ける。それがなんだか憎らしく思えて―――
「なあ―――工藤と毛利って、幼馴染だったよな」
と木村が言うと、新一はまた横目で木村を見て
「―――そうだけど?」
「別に、付き合ってるわけじゃねーんだよな?」
「・・・だから、なんだよ?何が言いたい?」
「ベーつに。ただ・・・毛利って可愛いよなあと思って、さ」
「・・・・・」
「あんだけ可愛いのに彼氏がいないって不思議だよなあ。何でつくんね―のかな。やっぱ好きな奴がい
るのかね」
“好きな奴”という言葉に、新一がぴくっと反応する。
―――正直な奴・・・。普段はクールなくせに、毛利が絡むだけで180度変わるんだな・・・。毛利
は工藤のこと、どう思ってるんだろう?やっぱ好きなのかな・・・。けど、今は“ただの幼馴染”だっ
て言ってるし・・・。やっぱ、今がチャンスだよな・・・。
木村は、新一の顔色を伺いつつ、熱でボーっとする頭で考えをめぐらしたのだった・・・。
新一は新一で、木村に言われたことを考え、イライラしていた。
―――こいつ、ゼッテ―蘭に気があるな・・・。どうにか諦めさせねーと・・・。でも蘭の奴に言っ
てもなあ。あいつ警戒心っつーモンがまるでねーし。あんなふうに顔覗き込んだり、額触ったり、腕掴
んだり・・・挙句にあんな可愛い笑顔見せやがって。俺以外にあんな顔見せんじゃねーよ・・・それと
も、まさか蘭のやつも木村のこと・・・?まさか!そんなわけねえ!そんなこと・・・ゼッテ―ゆるさ
ねーぞ!
―――日曜日。蘭は新一と映画を見に行く約束をしていて、待ち合わせ場所の駅で、新一を待ってい
た。
ところが、1時間待っても新一は現れず・・・
―――もう、映画始まっちゃてるよ・・・。新一ってば、また事件なのかな・・・。
電話をしてみたが、留守電になっていて誰も出ない。蘭は溜息をつき、家に帰ろうと歩き出したのだ
が・・・
「ねえ、君時間ある?」
と、蘭の前に立ったのは、見たことのない2人組の男。
「もし良かったら、俺たちと遊ばない?」
「―――どいてください」
「なあ、すっぽかされたんだろ?見てたんだぜ、ずっと」
「いやなことは忘れてさ、俺らと楽しもうよ」
1人の男の手が、蘭の肩に触れようとした、そのとき、蘭は思わず空手技を出そうとしたのだが・・・
「毛利、遅れてごめん!」
という声が後ろから・・・
「え?」
驚いて振り向くと、そこには木村が立っていた。
「木村君!」
目を見開く蘭に、目配せしながら木村が蘭の横に立つ。
「どうした?早く行こうぜ」
木村がさり気なく蘭の手をとると、蘭もハッとしたように笑い、
「あ、うん!もう、遅いよっ。今日は木村君のおごりねっ」
と言って、くるっと向きを変え、歩き出した。
残された2人組は呆気に取られ、その場に突っ立っていたのだった・・・。
「ありがとう、木村君」
2人から見えないところまで来ると、蘭は立ち止まり、木村を見て言った。
「あ、いや・・・余計なことかと思ったんだけどさ・・・。毛利、空手やってんだもんな。俺なんかが
助ける必要、なかったかな」
木村が照れたように笑う。
「ううん。あんまり人前で空手技とか出したくないし。ホント、助かったよ。ありがとう」
ふわりと微笑まれ、木村の顔がカーッと赤くなる。
―――やべ・・・可愛すぎ。今告ったら・・・どんな顔するかな・・・。
「木村君?どうしたの?」
小首を傾げる蘭。そして―――まだ手を繋いでいたことに気付いた木村は、その手をパッと離し、
「あ、ご、ごめん」
と慌てて言った。蘭はそんな木村を見てキョトンとしていたが、やがてクスクスと笑い出し、
「木村君、なんか今日変だよ?―――あ、もしかして、まだ風邪治ってないの?」
と、途端に心配そうな顔をする。
「あ、大丈夫だよ。もう熱も下がったし、部活にも出てるよ」
「そう―――あ、ごめんね。あの日・・・バスケ部でレギュラーを決める練習試合があったんでしょう
?わたし、無理やり帰しちゃって・・・」
「ああ、良いんだ。あんな状態じゃ、どうせろくなプレーできなかったし・・・それに、今回は1年で
レギュラーになった奴いないから。俺だけが遅れをとったわけじゃないからね。また次、がんばるよ」
と、木村が笑って言うと、蘭はちょっとまだ気にしているようだったが・・・
「―――うん。じゃあがんばってね。わたし、応援するから。―――あ、そうだ」
「何?」
「この間のお詫びと、今日のお礼に―――何か奢らせて?」
「ええ?良いよっ、この間のはこっちがお礼言わなきゃなんないくらいだし・・・それに、今日だって
、別に大した事は―――」
木村は慌てて手を振ったが、蘭は首を振り、
「だめっ、わたしの気が済まないもん。ね、何が良い?何でもいいよ」
と、ニコニコしながら聞いてくる。木村はどうしたものか悩んでいたが―――ふと、あるものに気付
き、
「じゃあさ、ジュース奢ってくれる?そこのでいいから」
と言って、指差したのは―――ジュースの自動販売機だった。
「え―――?でも・・・」
蘭が、戸惑ったような顔をする。
「でさ、あそこの公園のベンチで一緒に飲もうよ。今日は天気も良いし―――外のほうが気持ち良いよ」
「そんなんでいいの?本当に?」
「それで充分だよ。な、そうしよ?」
と、笑って言う木村に、蘭も漸く納得したように笑うと、
「うん、わかった。何が良い?」
と聞いた。
「俺、コーラ」
蘭はジュースを2本買い、2人で公園のベンチに座った。
「はい」
蘭に渡されたコーラの缶を開け、口をつける。
「サンキュー、毛利」
「ううん、これくらい・・・」
蘭はニッコリ笑って、自分もジュースを飲んだ。そんな蘭の横顔を、木村はじっと見詰めて・・・
「―――なあ、もしかして今日、工藤と約束してたのか?」
と聞くと、蘭はちょっと寂しそうに笑い、頷いた。
「ん・・・でも、来なかったの。きっと、また何か事件が起きて呼び出されちゃったのね」
「そういうこと、多いのか?」
「うーん・・・2回に1回は・・・」
「そんなに?んで、毛利はおこんね―の?」
「怒っても仕様がないし・・・。あいつ、事件の事となると、回り見えなくなっちゃうんだもん。悪い
とは思ってるみたいだけど・・・」
蘭は、今まで木村が見た事もない、寂しそうな顔で笑った。
「毛利・・・あの・・・さ、もしかして、工藤のこと・・・」
「え?」
「・・・あ、いや、なんでもない」
「?変なの、木村君」
蘭がクスッと笑う。それは、さっきまでとは違う無邪気な、明るい笑顔だった。それを見て、木村の
胸が痛んだ。
―――こんな可愛い笑顔を見せてくれるのに・・・。あいつのこと話す時は、あんな寂しそうな顔も
するんだな。それは、あいつが特別だからか―――?でも・・・俺は、毛利にはいつも笑顔でいて欲し
い・・・いつもあんなふうに笑っていて欲しい・・・。
「―――やめろよ」
「え?」
突然真剣な眼差しで見つめられ、蘭は戸惑った。
「何?木村く―――」
「やめちまえよ、あんな奴―――」
木村が、蘭の細い腕を掴む。
「木村く・・・」
今までの優しい目と違い、有無を言わさぬような、強い眼差し―――。蘭が戸惑っている間に、木村
の顔がそっと近づき―――
「蘭!!」
もう少しで唇が触れる、というところで、公園の入り口のほうから蘭を呼ぶ声が―――見なくても、
それが誰だか分かっている。
反射的に蘭がパッと木村から離れ、そちらを見て目を見開く。
「新一!」
新一が、それこそ鬼のような形相で、木村を睨みつけながら走ってきた。
「どうしたの?事件で呼び出されたんじゃないの?」
「どうしたのじゃねーだろ!?何やってんだよ、オメエら!」
「何って・・・何怒ってんの?新一」
木村にキスされようとしていたとは思ってもいない蘭が、キョトンとして聞く。
「何って―――何って、オメエ、わかってね―のか!?」
「分かるわけ、ないじゃない。ちゃんと言ってくれなきゃわかんないわよ」
ぷうっと頬を膨らませる蘭に、怒りを通り越してなんと言って良いのか分からない新一。―――その
光景を見ていた木村が、急にぷっと吹き出した。
「木村君?」
「―――何笑ってんだよ、テメエは!」
新一がギロリと睨む。木村はその視線を受け止めながら、笑って言った。
「いや・・・工藤も苦労してんだなあと思ってさ」
「どーいう意味だよっ?」
「別に。―――事件じゃなかったのか?」
「・・・ああ、そうだけど・・・すぐに犯人がわかっちまったから、さっさと片付けて急いで来たんだ
よ。―――蘭、ごめん。連絡できなくて・・・」
新一が、一転すまなそうに蘭に謝る。蘭は肩を竦めて苦笑いすると、
「いつものことでしょ。もう良いよ」
と言った。新一は少しホッとしたようだったが、また顔を顰め、木村を見た。
「で?何で木村がここにいんだよ?」
「木村君、助けてくれたのよ」
と、蘭が言う。
「助けてって・・・何かあったのか?」
新一の顔色が、サッと変わる。
「2人組みに、ナンパされてたんだよ」
「ナンパァ?」
「ま、毛利みたいな可愛い子が待ちぼうけ食らってんの見たら、誰でも声かけたくなるんじゃね―の?」
と木村がいうと、新一はばつの悪そうな顔をし、蘭はちょっと頬を赤らめた。
「木村君てば・・・。あ、でね、そのとき木村君が助けてくれて・・・お礼に何か奢らせてって言った
んだけど、木村君が缶ジュースで良いっていうから・・・。あ、新一も何か飲む?」
「え?―――ああ、じゃあコーヒー、買ってきてくれるか?」
「うん、。じゃ、ちょっと待ってて」
と言うと、蘭は公園の外の自動販売機まで駆けて行った。
「―――何か、言いたいことあんだろ?」
蘭が行ってしまうと、木村が新一を見て言った。
「・・・蘭を助けてくれたことは礼を言うよ。―――サンキュ」
「どういたしまして」
「けど、さっきのは・・・ゼッテ―ゆるさねーからな」
木村が蘭にキスしようとしていたことを言っているのだ。
「・・・オメエにそんなこと言う権利、あるわけ?毛利の彼氏でもね―のにさ」
と木村が言うと、新一はグッと詰まる。
「好きなら早いとこ告っちまえばいいだろ?毛利を好きな奴は他にもたくさんいるってことくらい知っ
てんだろ?」
「―――今言ったって、ダメなんだよ」
新一が、苦しげに言った。その顔が、本当に辛そうなのを見て、木村は驚いた。
「ダメって、何でだよ?」
「―――蘭にとって、俺はまだ只の幼馴染でしかねーんだ。今言ったら―――その幼馴染って関係でさ
え壊れかねない・・・」
「・・・ふーん・・・。怖いのか」
「!!な―――っ」
「新一お待たせ!―――どうしたの?」
缶コーヒーを持ってきた蘭が、新一の険しい顔を見て、目を丸くする。
「いや、なんでもね―よ。んじゃ、俺もう行くよ。ご馳走様、毛利」
「え、もう行くの?」
「ああ。―――じゃあな工藤」
木村は立ち上がると、新一の肩をぽんと叩いた。
「あ、ああ」
「―――言っとくけど、俺、諦め悪いから」
「!!それ―――どういう意味だよ?」
「油断すんなってこと。じゃあな、毛利、また学校で」
「うん。今日はありがとう、木村君」
蘭がニッコリ笑うと、木村は軽く手を振って、走って行った。
「新一?どうしたの?怖い顔して」
「―――オメエさ、あいつのことどう思ってる?」
蘭の質問には答えず、新一は逆にそう聞き返した。
「どうって・・・?良い人だと思うけど・・・」
「それだけ、か?」
「ん?うーん・・・なんか、親しみやすいよね、木村君って。悩み事とかなんでも聞いてくれそうだし
・・・。それに、かっこ良いし。ね、木村君って好きな子とかいるのかなあ?」
いきなりドキッとするようなことを言われ、新一は動揺してしまう。
「な、何でそんなこと聞くんだよ?」
「うん?園子がね、前に言ってたの。木村君てかっこよくて良いなあって。彼女いなかったらアタック
しちゃうのになんて言ってたから」
のんきにニコニコしながら言う蘭を見て・・・新一はホッとしながらも、なんとなく木村に同情して
しまうのだった。
―――これだからなあ・・・木村、オメエこそはっきり告んねえと蘭にはつたわらねえぜ?・・・ま
、でも、今んところ蘭にその気はねえみたいだし・・・。
「遅くなっちまったけど、これからどこか飯でも食いに行くか?」
と、新一が笑って言うと、蘭はパッと輝くような笑顔を見せて、
「うん!」
と頷いたのだった・・・。
――――今はまだ、このままで良い・・・。そのうち・・・
蘭の零れるような笑顔に見惚れながら、新一はその思いを胸にしまった。
いつか必ず蘭に伝えようと心に決めながら・・・。
fin
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この作品はキリ番4.000をゲットして頂いたぷい様のリクエストによる作品です。
はじめはショートストーリーにしようかと思ってたんですけど・・・。木村君というオリキャラが妙に
気に入ってしまい、長くなってしまいました。こういうのも良いですね。こんなドリーム小説あったら
やってみたいかも。と思いながら書きました。感想などありましたらBBSのほうへどうぞ!
