テスト前で、今日は部活がない。
そして千鶴とあやねは今日はピンに雑用を頼まれ、借りだされている。
「雑用なら私が・・・・・」
そう言う爽子に、千鶴が言った。
「あー、いいのいいの。どうってことないよ、このくらい。その代わり貞子ノート、期待してるからさ」
爽子がまとめたノートがないと、勉強する気になれないという千鶴のため、爽子は先に帰ることにしたのだった。
そして、風早と龍も一緒に帰る。
「3人で帰るのって珍しいよな。龍、いつも部活だから」
風早の言葉に、爽子も頷く。
「うん、ほんと。真田君、いつも頑張ってるもんね」
「あー、まあ・・・・・好きなことだから」
いつものようにそっけなく答える龍だけれど。
頬を指でかく龍の顔は、微かに赤くなっている気もした。
「でも・・・・・勉強はあんまり好きじゃない」
「だよなー」
「だから・・・・・俺も、見たいんだけど」
「何を?」
不思議そうに聞く風早。
爽子も首を傾げる。
「・・・・・貞子ノート」
その龍の言葉に、爽子は驚き―――感激していた。
「も、もちろん、いいよ!」
爽子を挟んで、3人で並んでいたのだが。
爽子が感激して身を乗り出すようにしたことで、龍と爽子の距離がぐんと縮まる。
もちろん爽子は無意識なのだけれど。
風早の眉がピクリと動く。
「英語が・・・・・苦手で・・・・・」
「うん、じゃあ真田君に、最初に英語のノート渡すね!千鶴ちゃんには数学頼まれてたから―――」
―――まるで、2人が一緒に帰っていて風早がその横にくっついているような感じ―――
もちろん風早の気のせいなのだけれど。
「お、おれも!」
「え?」
爽子が振り向く。
「お、俺も―――科学とか、苦手だから、その―――」
「あ―――うん、じゃあ、風早くんには科学のノート、作ってくるね」
「さ、さんきゅ―――あ、でも、そんなに沢山じゃ、黒沼が大変だよな」
「ううん、大丈夫だよ。あたしの作ったノートがみんなの役に立つなら、嬉しい」
そう言ってふわりと笑う爽子の笑顔に、見惚れる風早。
そしてその横では、そんな2人を見て笑う龍。
千鶴が帰ってきたら、一緒に勉強しようかと考えていたことは、言わなかったけれど・・・・・
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