T r i a n g l e + α


 12月24日、クリスマスイブ。町はどこもクリスマスカラー1色だ。もちろん、ここ工藤邸でも・・・
「新一、快斗、ツリーの飾り付け終わった?」
 さっきまでキッチンで料理の準備をしていた蘭が、エプロンを外しながら出てくる。
「おお、ばっちり」
 快斗が得意げにウィンクして見せる。
「こんなもんでいいのか?」
 新一もてっぺんの星をつけ終わり、脚立を降りてきた。
「うん!すっごく綺麗に出来たじゃない!さすがねv」
 蘭は満足そうにツリーを見上げた。そんな蘭を見て、2人ともホッと胸をなでおろす。
「3人で迎える、初めてのクリスマスだもんな」
 快斗の言葉に、3人、頷きあった。

 蘭がこの家に居候としてやってきてから約1年。双子の兄弟、新一と快斗との三角関係は相変わらず
である。FBIからの依頼でアメリカへ行ってしまった蘭の両親は、まだ帰ってくることが出来ずにい
た。が、週に1度は必ず蘭に電話を入れるなど、無事であることは分かっているので、蘭も心配はして
いるもののそう寂しがってはいなかった。それはやはり、新一と快斗の存在があるからで・・・この1
年、3人の関係はとても近付いていた。しかし、恋愛事情については、ちょっとした障害があるようで
・・・。

「わたし、ちょっと迎えに行ってくるね」
 蘭が玄関に向かう。新一と快斗は、きょとんとしてその姿を追った。
「は?迎え?」
「って、誰の?今日、誰かくんの?」
 と、蘭は呆れたように2人を振り返った。
「もう。この間話したじゃない。園子を招待したって」
「「園子ォ!?」」
 2人、異口同音に叫ぶ。その声には、いささかうんざりしたような響きが混じっているようだった。
 蘭の同級生である鈴木園子は、鈴木財閥の令嬢で、蘭の親友だ。蘭と同居するようになってから、た
びたび工藤邸を訪れるようになった園子は、双子の2人を見るなり2人の蘭に対する気持ちに気付いた
ようで、ことあるごとに2人をからかったり、邪魔したり・・・。もはや園子は、2人の天敵となりつ
つあるのだった。
「そんなこと、言ってたっけ?」
 と快斗が聞くと、蘭はぷうっと頬を膨らませて、
「2人とも、本を読んでてちゃんと聞いてなかったんでしょ!ちゃんと言ったよ?園子の家族、今年は
海外でクリスマスを過ごすんだけど、園子だけは部活があって行けないから一緒にクリスマスパーティ
したいんだけど、いい?って!2人とも良いよって言ってくれたじゃない!」
 と言った。
 2人は顔を見合わせ、首を捻る。
「・・・そういや、そんなこと言ってたような・・・」
「ん・・・よく覚えてねえけど・・・」
「も〜〜〜。とにかく、駅で待ち合わせしてるから行って来るね!」
 そう言うと、蘭はさっさと出て行ってしまった。残された2人は、再び顔を見合わせ溜息をつく。
「3人でのクリスマスはお預け、だな・・・」
 と新一が言うと、快斗も天を仰ぎ、
「やってくれるぜ、園子の奴・・・」
 と言ったのだった・・・。


「こんにちは〜〜〜!新一君、快斗くん、元気ィ?お邪魔するわよっ」
「・・・ほんとに邪魔なんだけど」
「なんか言った?快斗くん?」
「い〜え、別に」
 工藤邸にもすっかり慣れ、まるで我が家のようにくつろぐ園子。それでも決して嫌いになれない、ど
こか憎めない女の子なのだ。
「園子、コーヒー飲む?」
「うん。悪いわね、蘭」
「ううん。じゃ、ちょっと待っててね」
 蘭が行ってしまうと、園子は2人を見てにやりと笑った。
「―――なんだよ、そのいやな笑い」
 と新一が言うと、園子はいかにも楽しそうに
「だあって、2人ともすっごく分かりやすい顔してんだもん。大方、わたしが来ること知らなくって、
蘭とロマンチックなクリスマスvなんて期待してたんでしょう?」
 と言った。
 的を得た台詞に、2人の顔が引き攣る。
「でもさ、どっちにしろ一番の邪魔はお互いなわけだし?いいじゃない、クリスマスは賑やかなほうが」
 もっともな意見に、快斗は諦めたように溜息をついた。
「負けるよ、園子には。ま、俺らは蘭が楽しけりゃ良いんだけどさ」
「あら、この園子様を目の前に、言ってくれるじゃない。―――あ、それともあれ?快斗くんはひょっ
として期待してたの?新一君が事件で呼び出されていなくなるのを」
 その言葉に、快斗はドキッとし、新一の顔は引き攣った。
 新一は、いまや日本中で知らない人はいないほどの有名人だ。というのも、名探偵とうたわれる蘭の
父、毛利小五郎がアメリカに行ってしまってから数ヶ月、偶然とある事件に出くわした新一が、その明
晰な頭脳をフル回転させ、あっという間に事件を解決してしまったことから始まる。いまや高校生名探
偵として全国にその名を轟かせ、殺人事件が起きれば警察から呼び出されるという超多忙な日常を送っ
ているのだ。
「―――ふーん、なるほどな。で、俺が今日の依頼を始めから断ってっから、俺がいるなら他に誰がい
てもおんなじってことか」
 新一が半目になって、快斗を睨みつつ言うと、快斗は新一から目をそらし、冷や汗をかきながら言い
訳を考えた。
「や・・・別に、そんなことは考えてねえけど・・・蘭も、両親いなくて寂しいだろうからさ、大勢の
ほうが賑やかで良いかなあと・・・」
「とってつけたように言うんじゃねえよ」
「ま、でもそれはほんとよね。蘭って、寂しがりやのくせにそれを表に出さないようにするじゃない?
でも、わたしなんか付き合い長いからさ、他の人には分からなくっても無理してるのがみえみえなのよ
ね。そうなると、放っとけないじゃない?蘭の大親友、園子様としてはさ」
 園子の言葉に、2人は黙って顔を見合わせた。
 もちろん、2人だってわかっている。蘭が寂しがり屋で、そのくせそれを隠そうとして無理に明るく
振舞っていることを。
 ―――やっぱり、これでよかったのかも知れねえな。
 ―――園子の思い通りってのが気にいらねえけどな・・・。
 なんとなく、園子に丸め込まれてしまった感のある2人だったが・・・。何はともあれ、こうなって
しまっては仕方がないと、クリスマスパーティの準備を始めることに。キッチンで料理を仕上げるのは
、蘭と快斗。そしてそれをテーブルに運ぶのは園子と新一。指示をするのは蘭で、4人のチームワーク
はばっちりだった。

「こんなもんでいいの?蘭」
 あらかた準備が整い、テーブルを見ていた園子がキッチンから出てきた蘭に聞いた。
「うん!良いんじゃない?さすが園子!センス良いね」
 蘭がにっこりと笑って言う。園子は得意げに胸を張って見せた。
「まあね〜。園子様の手にかかればこんなもんよ」
「おい、俺だってやってるんだぜ?」
 と、横から不機嫌そうに言うのは新一。
「新一も、ありがと。園子との息もぴったりだったね」
 蘭の言葉に、新一は複雑そうな顔をする。と、快斗はニヤニヤと笑い
「良かったじゃね―か。意外とお似合いだぜ?お二人さん」
 と言った。新一がじろりと快斗を睨んだが、そっぽを向き、気付かない振りをする。
 その光景を見て、蘭が楽しそうにくすくすと笑う。
「じゃ、そろそろはじめようか。シャンペン、持って来るね」
 と言って、蘭が再びキッチンへ行こうとするのを、快斗が止める。
「蘭はもう座ってろよ。朝から動きっぱなしで疲れただろ?後は俺と新一でやるから」
「そうそう。もう家政婦じゃねえんだから、少しゆっくりしろよ」
 新一に促され、椅子に座る蘭。2人が行ってしまうと、園子が感心したように口を開いた。
「ふーん。いつも喧嘩ばっかりしてんのかと思ったけど、意外と息が合ってんのね、あの2人」
「うん、とっても仲良いよ。喧嘩も、本気でやり合ってるわけじゃなくてあの2人にとっては挨拶みた
いなものだから」
「へ〜。そういえば、2人が喧嘩するのって、大体決まってるものね」
 蘭が絡んでる時って。
 最後は声に出さずに。蘭はきょとんとしているが、園子は笑ってごまかした。蘭のせいで喧嘩する、
なんて言ったら、蘭のことだから真剣に悩んでしまうだろう。

 快斗と新一が、シャンペンとグラスを持ってくると、いよいよパーティの始まり。料理を頬張りつつ
、楽しいおしゃべりに花が咲き、賑やかな時間が過ぎていく。
 料理が大体片付いてくると、蘭が手作りのケーキを切り分ける。
 手作りとは思えないような、華やかなチョコレートケーキだ。
「うん!おいし〜。甘さ控えめなのが良いわね!蘭、やるじゃない」
「えへへ、ありがと。新一が、あんまり甘いもの好きじゃないから、チョコレートをビターにしてみた
の」
「な〜るほどね。幸せものよね〜あなたたち。ところでさ、一度聞いてみたかったんだけど、あんたた
ちって女の子と付き合ったこととかないの?」
 唐突な園子の質問に、2人が呑んでいたシャンペンを吹きそうになる。
「な、なんだよ、突然?」
 新一がどうにか息を整えて言う。
「だってさ、2人とも結構もてそうじゃない?今はいないこと知ってるけどさ。今まで、付き合ったこ
ととかないの?」
「そういえば、わたしも聞いた事なかったな」
 そ、蘭までが言い出し、2人は顔を見合わせた。
「俺はねえよ」
 と新一が言うと、快斗も
「俺もない」
 と言った。
「へ〜え、ほんとに?良かったじゃない、蘭」
 との園子の言葉に、蘭が顔を赤くし、新一と快斗も驚いた顔をする。
「え、な、何でわたしなの?」
「だってさあ、やっぱり2人の恋愛事情って気になるでしょう?学校も違うしさ。心配じゃない?」
「え、えーと、それは・・・」
「蘭ってばさ、あんたたちと暮らし始めてから、あんたたちの話ばっかりすんのよ。新一がどうした、
快斗がああしたってね。もうそりゃ、あんたたちに初めて会った時も初対面って感じがしなかったくら
いだもの」
 園子の話に、新一と快斗の顔が高潮する。
「蘭、マジで?すっげー嬉しいんだけど」
 と快斗が言えば、新一も
「俺らの話なんて、してくれてたんだ」
 と感動している。
 2人にとって、蘭は何よりも大切な存在だ。しかし、蘭にとって2人がどのくらいの位置をしめてい
るのか、当然2人は知らない。自分たちの想いばかりが大きくて、蘭にとっては重荷になってしまうん
じゃないかと心配していたくらいなのだ。それが、今の話を聞いて・・・。もしかしたら、蘭にとって
も自分たちは特別な存在なのかもしれない、と思わず期待せずにはいられなかった。
 その蘭の口から出てきた言葉は・・・
「だって・・・。2人といると、すごく楽しいんだもん。毎日が楽しくって、誰かに話したくなっちゃ
うの。わたし、1人っ子だから、兄弟が出来たような感覚なのかな」
「兄弟、ねえ・・・。微妙な存在よね」
 園子が、2人を見てにやりと笑う。
 2人はといえば、それこそ複雑な表情で・・・。
「ま・・・。そんだけ蘭が、俺たちのことを大切に思ってくれてるってことだよな・・・」
 と言う快斗に、蘭はにっこりと笑った。
「もちろん!2人とも、大好きなんだから!」
 まさに天使のように微笑む蘭が、眩しくて、愛しくて・・・。
 「大好き」の意味が、恋愛感情のそれなら、言うことないのだが。
 2人して同じことを考え、同時に溜息をつく。
「あらあ?溜息なんかついてどうしたの?蘭に大好きって言われて嬉しくないわけ?」
 そんな気持ちを見透かしたように、園子が大げさに言って見せる。と、途端に蘭の表情は曇り、新一
と快斗は慌てて蘭の側に寄る。
「嬉しくないわけねえだろ?」
「そうそう!俺らだって蘭のことが大好きなんだぜ!」
「あ、そ、そうだ。クリスマスプレゼント、あるんだぜ?」
「ああ、そうだった。阿笠博士んとこに置いてあんだ。ちょっと待っててくれよ!」
 そう言って、2人があわただしく出て行ってしまうと、園子が堪えきれなくなったように吹き出した。
「く・・・あ―――はっはっはっ。おっかしー―!」
「そ、園子・・・?」
「あは・・・ご、ごめん。何でもないのよ。あ、そうだ。あんたの2人へのプレゼントも持ってきたわ
よ」
「あ、ありがと。ごめんね、持たせちゃって」
「良いわよ、別に。ところでさ、ほんとのところどうなの?」
 園子の意味深な笑いに、蘭はきょとんとする。
「ほんとのところって?」
「だからさ、あの2人のどっちが好きなわけ?まさか、本当に兄弟みたいだなんて思ってるわけじゃな
いでしょう?」
 園子の言葉に、蘭が拗ねたように頬を膨らませる。
「何よお、そう思ってちゃいけないの?」
「いけないって言うか・・・本当に本気でそう思ってるの?」
 驚く園子から、蘭はちょっと目をそらすと、少し間を置いてから口を開いた。
「ずっと・・・このままでいたいの・・・」
「え?」
「ずっとこのまま・・・楽しいときが続けば良いのにって、思うの。でも、だめなのかな・・・」
「蘭?あんた・・・」
「嘘をつくのは、悪いことだよね?でも・・・まだ、このままが良いの・・・」
 ほんのり頬を染め、うるんだ瞳で新一と快斗の座っていた席を見つめる蘭。そんな蘭を、びっくりし
て見つめる園子。
 ―――蘭・・・?あんた、まさかあの2人の気持ちに気付いてるの?それとも・・・あの2人のうち
のどちらかを、好きになった・・・?
 園子が言葉を発せずにいると、玄関のドアが慌しく開き、2人が入ってくる音がした。
 蘭と園子ははっとして、顔を見合わせた。
 蘭はちょっと恥ずかしそうに、舌を出して見せた。
「・・・なんてね。今の、忘れてね」
「え・・・う、うん・・・」
「おっ待たせ――!あのよお、園子、俺らおめえがくんのすっかり忘れててさあ」
 プレゼントの箱を持った快斗が、部屋に入ってくるなり園子に言う。
「そうなんだよ、プレゼント、用意してねえんだ」
 と、新一。途端に園子の顔色が変わる。
「え―――!?何よ、それェ!許せなあい!」
 立ち上がって、食ってかかろうとする園子から逃げながら、快斗が続ける。
「まァ待てって!話を聞けよ。だからさ、これから俺が即興でマジックやっからさ」
「え、マジック?」
「そ。新一にも協力してもらって、とっておきのやつ見せるからさ、それで勘弁してくんねえ?」
 その言葉に、園子はちょっと考える。
 快斗のマジック好きは、園子も知っている。その腕はプロ顔負けのすばらしいものなのだ。
「―――分かったわ。仕方がないからそれで許してあげる」
「うわあ、良かったね、園子。わたしも快斗のマジック見るの久しぶりvv楽しみ!」
 蘭も瞳を輝かせている。それを見て、ちょっと眉を吊り上げる新一と、頬を染める快斗。そして、園
子は・・・
 ―――ちょっと・・・わたしへのプレゼントじゃなかったの?


 「うわあ、すっごい!」
 快斗のマジックに、蘭も園子も大喜び。何だかんだ言って、息の合っている新一とのコンビ。やって
いる本人たちも楽しそうだった。
 そして、いよいよクライマックスへ―――
「さ、ここで園子嬢に登場していただこうかな」
 と言って、快斗が園子に手を差し出した。
「え?わ、わたし?」
 うろたえて蘭のほうを見ると、蘭は楽しそうに笑いながら
「行ってきなよ!がんばって!」
 と言った。
 園子はドキドキしながら快斗について前に出た。
 そこで快斗の持つシルクハットを受け取り、中から次々に小さな旗が出てくるのを目を丸くして見て
いる。そして最後、快斗がスカーフをシルクハットにかけ、カウントをはじめる。
「ワン、ツー、スリー!」
 ふわりと捲られたスカーフの下から出てきたのは、シルクハットから溢れんばかりに入れられた、色
とりどりの花だった。
「うわ!すご・・・」
 思わず絶句する園子。快斗はシルクハットの中から花束を取り出すと、園子の前に差し出した。
「慌てて買いに行ったからあんまし良いの選べなかったけどさ。これ、俺と新一から、園子にな」
「あ・・・ありがと・・・」
 まだ呆然としている園子の手をとり、快斗はその手の甲に軽くキスをした。
「!!」
 びっくりして真っ赤になる園子に、快斗はにやりと笑って見せる。
「お・ま・け」
「あ・・・あのね〜、びっくりするじゃない!も〜・・・」
 そして、何気なく蘭のほうを見てみると・・・
 ―――え・・・
 蘭の瞳が、ほんの少し悲しげな影を見せていたように、園子には見えた。園子の視線に気付き、すぐ
にいつものような明るい表情に戻ったのだが・・・。

「んじゃ、次は俺から蘭に!メリークリスマース!」
 快斗がいつものように蘭に抱きつくと、その横から新一が割って入り、引き剥がす。蘭もいつものよ
うに真っ赤になっていて。いつもと何ら変わりない光景だ。
 ―――このままがいい、か・・・。
 ほんのちょっと垣間見てしまった蘭の本心。園子は、ちょっと複雑な思いで3人を見ていた。
 ―――蘭がそれで良いなら、良いけど・・・。
 

 園子が帰り、工藤邸に静寂が戻ったのはもう日付が変わろうとしていた頃だった。
「園子、泊まっていけばよかったのに・・・」
 と、蘭が呟くのを聞いて、2人は(それだけは勘弁してくれよな・・・)と思ってしまうのだった。
「でも、楽しかったね」
 2人を見て、蘭がにっこりと微笑む。その笑顔に、見惚れる2人。
「そうだな・・・。来年も、楽しいクリスマスにしような」
 と、新一が言うと、蘭の瞳が大きく見開かれた。
「来年も・・・わたし、ここに来て良いの?」
「当たり前だろ?何言ってんだよ、蘭」
 と、快斗。
「だって・・・。来年には、お父さんもお母さんも帰ってきてるだろうし・・・。そうしたら、わたし、
ここにはいられないじゃない」
「けど、俺たちの関係が終わるわけじゃないだろう?蘭はいやなのか?俺たちといるの」
 と言う新一の言葉に、蘭はプルプルと首を振った。
「そんなわけ、ないじゃない!わたし・・・2人といたい。来年も・・・3人で、クリスマスを迎えた
いよ・・・」
 大きな瞳に涙を浮かべながらそう言う蘭が、たまらなくかわいかった。
「じゃ、決まり。来年も3人で・・・な」
 快斗のウィンクに、蘭も微笑む。
 蘭を見つめる2人の眼差しは、とても暖かくて・・・。蘭は、この関係を壊したくなかった。3人で
いる、この暖かい空気を、壊したくない。だから・・・自分の、本当の気持ちは心の奥底にしまってい
た。いつまでも兄弟のように、仲のいい3人でありたかったから・・・。
 そんな蘭を見つめる2人の心中は複雑で。蘭の中で、何かが変わってきているのを、2人とも感じて
いた。大切で、愛しくて、誰にも譲りたくない彼女。だけど・・・。
 ―――蘭が、俺か快斗のどちらかを選んじまったら、こんなふうに3人で過ごすことは出来ねえよな
・・・。
 ―――新一に渡す気はねえけど・・・。蘭が大切に思ってるものを、壊したくはねえよな・・・。

 聖夜に想う、3人のそれぞれの想い。
 いつまでもこのままで・・・。だけど、それが本当に3人にとって幸せなことなのか・・・。
 それは、今の3人には分からなかった。
 来年のクリスマスには、その答えは出ているのだろうか・・・?
 
 静かにふけていく聖夜に・・・・・・
        3人の想いも、静かに溶けていった・・・・・。



 なんだか、続いてるし。短編のはずだったんだけど・・・。こんなの、あげるって言われてもねえ。
それでも貰ってくださるという方がいましたら、どうぞお持ち帰りくださいv